はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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天秤は揺れている

強い青を光らせた空の下、土砂降りの雨が堂々とフロントガラスを叩く。崩れたバランスを表すかのような天気雨。ふいに不安になる。自分のなかの天秤が、ぐらぐらと揺れるのを感じる。

理由もない微かな不安は誰もが持っているもので、自分のなかにだけに座り込んでいるものではないと、今では知っている。
それでもふいに不安になる時のバランスの崩れ方は、予測不可能だ。座り込んでいた不安は立ち上がり、何処までも伸びていく。どんな狭い場所にも入り込み、強い生命力を持つ蔓のように、何もかもをがんじがらめに締め付ける。
「狐の嫁入り」は、不安を引き起こす兆候だ。昔の人も、不安になってファンタジックな連想をしたのだろう。

そんな時には目をつぶり、天秤を思い浮かべる。
片方に幼いわたしだけが乗った、地につき安定した天秤。それが生きていくに連れ、もう片方に乗せるべきものや、自分の脇に置いておきたいものや、そのいろいろが増えていく。シーソーのように天秤は揺れているのが常で、静止するのはどちらかが地についている時しかない。それは、独りぼっちになった時だろうか。それとも、自分を失くした時だろうか。
意識せずとも、常に天秤は揺れている。揺れている方が、余程自分のままに生きていると言うことなのだ。そう思うと、少し楽になる。少しだけでも楽になった分、たちこめる黒雲の向こうの青空が浮き上がって見え、胸のなかの雲が少しずつ晴れていくのだ。

あっという間に、空は泣き出しました。

森の木も、赤い実も、雨に打たれていたでしょう。
カーブの道標が、道しるべのよう。「雨が来るよ。急ぎなさい」

青いまま落ちたどんぐりも、アスファルトの上、濡れているのかな。

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水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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