はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『陽気なギャングは三つ数えろ』

ギャングが、出た!
と言っても強盗にあった訳ではない。出たのは、伊坂幸太郎の陽気なギャングシリーズの3作目だ。2作目出版は9年前になるので、ファンでさえもが青天の霹靂と、うれしい驚きが広がっている。
「どうしよう!」
伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間は、苦悩していた。
「久遠に、歳を抜かれたら、もう生きていけない!」
前作では二十歳だったギャングキャラ最年少の久遠に、並々ならぬ思いを抱いているのだ。あれから9年経ち、彼女は今二十一歳の誕生日を迎えようとしている。苦悩する彼女の代わりに、先に本を開き、久遠の年齢をメールした。
「たぶん29歳。現実社会と同じだけ、年月は流れてるっぽい」
そう。ギャング達もあれから歳を重ねたのだ。

だがしかし、彼らは変わっていなかった。変わってはいなかったのだ。
久遠は、相変わらずの天才掏摸。以下本文から。

「だからといって、反射的に財布を掏ってくるのはいかがなものか」
成瀬の言葉に久遠ははっとし、少し照れる。「気づいてた?」
「何だよ、おまえ、よそ様の財布をそんなふうに盗ってきたら駄目だろうが」
「だって、僕たちの慎一くんをガミガミ叱っているのが腹立っちゃって」

成瀬も変わらず、他人の嘘が読める。以下本文から。

「六より上か?」成瀬は直截的な問いをぶつける。
「はい」と大桑が即答した。
表情からは何も読み取れない。成瀬は別段、相手の顔を凝視するでもなく、どちらかといえば、一瞥する程度だった。が、特に悩むでもなく「六より上だ」と断定口調で言った。
「約束通り、俺のお願いを」「どうして当たりだと分かるんですか」

雪子の体内時計も、運転技術も、変わりない。以下本文から。

「あ、成瀬さんから電話」久遠は言うが早いか、電話に出ていた。
「今、ちょうど向かっているところ。道はそんなに混んでいないから。ええと、雪子さん、あと」
「千三百秒くらい」「それって、何分?」

響野は、変わりようもなくお喋り。いや、演説の天才。以下本文から。

「みなさんのお時間を四分いただきます」
口をマスクで覆っているにもかかわらず響野の声はよく通る。
「それまでその場から動かないでください。この手にある拳銃は本物ですが、私はこれを使いたくありません。みなさんも、使ってほしくないわけです。意見は一致しています」

9年経っても、彼らは彼らのまま、変わらず銀行強盗をやっていた。そして変わらず、トラブルに巻き込まれていった。それが、とてもうれしい。変わらぬ方がいいものも、ある。いや、変わってほしくないものと言うべきか。

「銀行強盗を行う犯罪者を楽しそうに描いていいのだろうか」
伊坂は、そう迷いながら「どこからどう見ても現実な物語ではない」
ギャングシリーズはお伽噺のようなものなのだと、気づいたそうです。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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