はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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心根にはびこる、きのこの魔力

夕方、林を挟んだ隣に住むご夫婦の、ご主人の方が嬉しそうに玄関に現れた。
「これが、見せたくてさ」
手に持っていたのは、40㎝ほどの大きな、きのこ。
「あー、それ!」「さっき、見たやつだ!」
夫とわたしは、散歩中、そのきのこを見ていた。
「どうせ毒があるよね」「堰の向こうだし、写真撮るのも難しいね」
そんな会話をして、通り過ぎていたのだ。
しかし、そのきのこは食べられると言う。

キイロスズメバチに一時に8カ所刺された経験を持ち、珈琲の焙煎もでき、日本野鳥の会所属の陶芸家であり、山菜にも蛇にも詳しいご近所さんを訪ね、聞いたというのだ。彼は、当然きのこにも詳しい。一つ進呈し、相談したところ三ツ星きのこである『オオイチョウタケ』または、中毒例がある『ムレオオイチョウタケ』である可能性が高いとのことだった。
「料理して、美味しかったら、持ってくるよ」
隣人は去り、その夜、連絡はなかった。
「だいじょうぶかな?」「奥さん、今夜いるのかな?」
心配しつつ朝を迎えると、メールがあった。
「生きています」ホッとした。
『ムレオオイチョウタケ』だったらしく、食べられたが匂いが鼻につき、美味しいとは言えなかったとの感想。中毒もなかったようだ。
ちなみに、ご近所さんの感想はこちら

しかしそこまでして、何故にきのこを食べるのか。そこに、きのこが在るからなのか。いや。きのこには、人を魅きつける何かがあるのかも知れない。多分、魔力のような何か。人の心根に、根づいてはびこる菌のような何かが。
「食べられるかも知れない」と思った途端「食べない」という目の前にある選択肢は無色透明無味無臭となり、すっかり見えなくなってしまうのだ。
それにしても、嬉しそうだったなぁ、お隣さん。巨大カブトムシを見つけた少年のような笑顔だった。

うちわより大きい! 強面ですが、とっても優しいお隣さんです。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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