はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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混乱を混乱のままに抱きかかえて

「やっぱ、やられたかぁ」文庫本を閉じ、微笑む。
大藪春彦賞を選考した大沢在昌の言葉が、帯にあった。
「計算し尽くした上で、読者をも企みにはめる、恐ろしい書き手である」
覚悟はしていたが、やはりハメられた。ミステリーの醍醐味を味わった。
沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉文庫)変わった名だが女流作家だ。

主人公、亮介は、損なわれていく自分達に、ただ呆然としていた。
婚約者が失踪し、父は末期癌を宣告され、そして、母は突然、交通事故で死んだ。頑なに治療を拒みひとり暮らす父を訪ねた彼は、押し入れにしまい込んであった4冊のノートを見つける。『ユリゴコロ』と題されたノートには、殺人に取り憑かれた誰かの告白文がびっしりとかかれていた。
イヤミス(嫌な読後感が残るミステリー)の旗手とも言われている作家だが『ユリゴコロ』に関して言えば、脇を固めるキャラの魅力のせいか、読後感は、そう悪いものではなかった。あくまでミステリー好きから観た意見だが。

そんなミステリーという分野を超えて、印象的な文章に、出会った。
『年をとるというのは、たぶん、混乱を混乱のままに抱きかかえて生きられるようになることではないだろうか。人間の心そのものが、永遠に解き明かせないひとつの混乱だと、知ることではないだろうか』

犯罪とは縁遠い日常のなかに居ても、様々な混乱を抱えて悩み苦しむことは、誰にだってあるはずだ。そんな自分のなかで、何かにあらがい続け暴れていた混乱が、いつしか静まっていくのを感じていた。

帯は、2種類ありました。2年前の本屋大賞ノミネート作品だそうです。
そして、第14回大藪春彦賞受賞作品です。

甲府駅の駅ビル『エクラン』4階のタリーズで。雑誌がたくさん並んでます。

隣には、本屋さん。電車の待ち時間を過ごすのにぴったり。
駅ナカにあれば、なおいいんだけど、田舎ではそうもいきません。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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