はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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本の神様のプレゼント

息子は小さな頃から本の虫だったが、3つ年下の真ん中の娘は、友達と遊ぶことの方が好きで、小学生時代あまり読書はしなかった。本を薦めたことはあったかと思うが、彼女は読まなかった。わたしもそんな彼女に、無理やり読書を薦めることはしなかった。
漠然とだが、彼女は本が好きじゃないタイプなのだと思い込んでいた。読書好きな子も嫌いな子もいてもいい、ひとりひとり違うのだからと思ったのだ。

だが、そんなわたしの思い込みをくつがえす出来事が起きた。娘が中2の夏休み。家族で佐渡を旅した。わたしはフェリーのなかで読もうと佐藤多佳子の『黄色い目の魚』(新潮文庫)を鞄に入れていた。16歳という季節を切なくもリアルに描いた青春小説だ。ところが、その本を開いたのは娘だった。中2女子には家族旅行など退屈なだけだったようで、単なる暇つぶしにと娘はページをめくっていったのだ。そして物語世界のなかへと深く深く入っていった。

わたしは思い知らされた。自分が娘のために選んでいた本が、全く彼女が読みたいものと違っていたことを。彼女は、中学生向けにかかれたものを読む年齢を、本を読まずして通り過ぎ、ファンタジーにも興味を持てず、面白いと思える本を見つけられず、迷子になっていたのだ。
旅行から帰り、わくわくしながら娘のために本を選んだ。確か、森絵都の『宇宙のみなしご』(講談社)や、瀬尾まいこ『卵の緒』(マガジンハウス)、江國香織の『つめたいよるに』(新潮文庫)や、山本文緒の『絶対泣かない』(角川文庫)などだったと思う。大人になる過程の揺れる気持ちや、恋、友達との確執や、自分を理解してもらえない淋しさ、もどかしさ。そういうものが宝物のように散りばめられた本達。
彼女は、乾いたスポンジが水を吸い込むかのように、本を読んでいった。

本当に本を嫌いな子などいないんじゃないかな、と今は思う。読みたい時期に読みたい本に出会えさえすれば、みんな本を好きになるんじゃないかなと。
『黄色い目の魚』は本の神様が娘にくれたプレゼントだったのかもしれない。

庭に隣の林にと、野生のホソバウンランが咲き始めました。
海外ではトードフラックス(ヒキガエルに似た1年草)と呼ばれています。
でもよく見ると、黄色い目の花?

わたしも末娘も何度も読んだので、文庫本はぼろぼろ。
「16歳だった、すべての人へ」とかかれた帯も失くしてしまいました。
400ページ以上ある、けっこう分厚い文庫です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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