はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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葡萄とも檸檬とも違って

新しいトートバッグにパソコン入れて、東京に行った。
スペインの『Vaho』というブランドは、撥水性の布を使ったポスターをリサイクルしてバッグや財布、名刺入れ、リュックなどを作っている。丈夫でパソコンを持ち運ぶのにぴったりだ。
『Vaho』は、スペインに何店舗もあり、どこも小さめの店だが展示方法が斬新だった。店の白い壁には磁石がつくようになっていて、すべての鞄のなかに磁石を入れ、壁にペタペタ貼ってあり、鞄を手に取ってみて、またペタンと壁に貼り付ける。
ポスターのリサイクルだということもあり、色やデザインなど本当に様々で、同じものはひとつもない。世界に一つだけのバッグである。

「あ、これ素敵」わたしの目当ては、最初からトートバッグに絞られていた。
バッグを手に取ったその時、夫が呼んだ。「これ、どうかな?」
彼は、ショルダーバッグを見ている。わたしは、トートバッグをペタンと壁に戻し、夫が見ているショルダーのコーナーに行った。あれこれと言い合い、迷っていた彼は大きめのショルダーバッグをひとつ買うことに決めた。
さて。と、わたしはトートのコーナーに戻った。そこで衝撃的なものを目にした。素敵だと思ったトートバッグを腕にかけた女性だ。
「あ、あ、あ、あれ、いいなと思ったのに」夫に、こそこそと言いつけた。
「いいと思ったら、離しちゃだめだよ。同じものはないんだから」
後の祭りである。その女性は気の強そうな顔をして、強い口調でスペイン語を(たぶん)しゃべり、柔らかい色合いのトートを好みそうには見えなかった。トートが買われて店から出て行くまで、彼女の気が変わるのを祈りつつ、わたしは成すすべもなく見守った。
「悔しい!」「そりゃ、悔しいねぇ」
夫はショルダーバッグを買い、機嫌よく歌うように言う。
「悔しい! 悔しい! 悔しい!」「そりゃ、悔しいよねぇ」
などと言いつつ歩いていたら、もう一つの『Vaho』の店舗の前を通った。そこで、今持っているバッグに出会ったのだ。
「こっちの方が、さっきのバッグよりいいよ」と、夫。
「イソップの狐が取れない葡萄を酸っぱいって言って、手に入る檸檬を甘いってかじってるのと同じような気もする」と、ひねくれてわたし。
しかし今では、このトートがとても気に入っている。葡萄とも檸檬とも違うところは、バッグは使うほどに味が出て、自分の物になるということである。気の強そうな彼女のトートも、今頃何処かで彼女に馴染んでいることだろう。
   
表も裏もマチの部分もなかにも、様々なポスターが使われています。
  
展示しているのを見たり、手に取ったりするだけで楽しめました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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