はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『走れ! タカハシ』

村上龍の連作短編集『走れ! タカハシ』(講談社文庫)を、再読した。
読みたくなったのは、夫のひと言。
「あ、タカハシ、走ってる」
夫は、ジョギングする人を見かけると、いつも走っているチームメイトの名を口にするのだ。
「そう言えば『走れ! タカハシ』って小説あったよね? 映画では『走れ! イチロー』になってたけど」
「タカハシって、カープにいた足の速い選手?」と、夫。
「選手のことはよく知らないけど、とにかくタカハシを応援する普通の人達をいくつかの短編で描いた小説だよ」
そんな話をしていたら、読まずにおれなくなったのだ。
タカハシは夫の言う通り、広島カープの盗塁王、高橋慶彦選手だった。
以下『part9 私は小説家である』より。

「ここは走るところじゃないよな」「どうしてよ!」
ムツミはタカハシが一番好きなのだそうだ。
「コージにじっくり打たすべきだ、ちょろちょろリードするとコージが打ちにくいだろ? コージは4番だぜ、2番じゃない」
「ヨシヒコはいいのよ、あたし走って欲しいわ、あの人が走るところ見るの好きなの」
タカハシは大きくリードをとる。スチールを警戒するエンドウは長い間合をとり、牽制球を投げ、ヤマモトもたびたびボックスを外す。結局、一分以上待たされてヤマモトはじれ、2球目を打ってショートゴロゲッツーだった。
「見ろ、タカハシがちょろちょろするから、チャンスが潰れたじゃないか、きょうエンドウすごいからなかなかランナーなんて出ないぞ」
エンドウもタカギも最高のピッチングで、ゲームは延長に入った。
10回の表だ。先頭打者のタカハシは、一球目大きなスイングでフォークを空振りした後、二球目をサード前に絶妙に転がした。また、ノーアウト一塁だ。今度は、タカハシのリードが小さい。しかし、ヤマモトはフォークボールを空振りの三振、ナガシマは速球につまってサードのファールフライに倒れた。次はコバヤカワだ。私の一番好きな選手だ。ところが、タカハシは、コバヤカワがボックスに立つと、再びリードを大きくしたのである。タカハシのバカがまたコバヤカワを打ちにくくしやがって、と私がブツブツ呟いていた時だ。
ひときわ大きくよく通る声で、
 走れ! タカハシ、
と、男の叫び声がしたのである。

スポーツ選手のファンにだって、いろいろな人がいる。そのひとりひとりに人生がある。そしてその人生のなかでも大切な瞬間がある。タカハシが走っているから、がんばれる。そういう人もたくさんいたのだろう。
折しも昨日、イチローが3000安打を達成した。映画版ではオリックス時代のイチローが登場する他、3人の普通人イチローが、再起をかけ、夢を追い、奮闘するらしい。映画版も、観たくなってきた。
そう言えば、愛用のストレッチポール、イチローも使っているのだとか。

1986年に刊行された小説を、文庫化したものだそうです。
ちょうど30年前。昭和な味わいが出ています。

久々に開いて、驚きました。昔の文庫本って、字が小さい!
1989年発行の文庫です。今時の文庫は老眼の人にも優しいんだな。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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