はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『探偵の探偵』

松岡圭祐『探偵の探偵』(講談社文庫)を、読んだ。以下冒頭文から。

「探偵」を辞書でひけば、明確な定義が見つかる。他人の行動や秘密をひそかにさぐること。また、それを職業とする人。
小説の世界に生きる探偵とは体臭を異にする。民間人ながら警察から一目置かれ、捜査に介入し、関係者が集う場で論理的な推理を披露、容疑者を特定する。そんな記述は辞書にない。

この本に描かれている「探偵」は、アニメや小説で登場する「探偵」とは違う、との注釈とも言える始まり方だ。
主人公、紗崎玲奈(ささきれな)は「探偵のすべてを知りたい」と、探偵養成所に入校する。その理由は、妹、咲良(さくら)の死にあった。ストーカーに殺された妹の、行動を探り犯人に売っていたのが「探偵」だったからだ。
玲奈は、卒業後、中堅探偵事務所の「対探偵課」で、働き始める。他の探偵事務所の悪事を暴き、悪行をやめさせていく仕事だ。
「よくいえば業界の自浄、悪くいえば同業者潰し」とかかれているだけあり、同業者の目は冷たく、命を狙われることも、日常となる。
それでも、玲奈は淡々と仕事を、こなしていく。
咲良への愛なのか。名も知らぬ探偵への復讐なのか。決して負けないという気持ちだけが、笑顔を持たぬ彼女の光だった。

ストーカーの依頼で咲良の行動を探っていた探偵は、もし逮捕されても共犯にはならず、罪には問われないだろう、とある。
人を殺してはいけない。それを手伝ってはいけない。そんなことはみな判っている。だが、これくらいならと起こした行動が、殺人に繋がっていくことだってあるのだ。わたしが、探偵になることはまずないだろう。だが、如何なる時にも自分の行動の先を見つめなければと、考えさせられる小説だった。

パッと見、ホラーっぽい表紙ですが、ホラーな要素はありません。
玲奈を含め、様々な探偵にスポットを当てた、人間ドラマと言えます。
帯の「リーダビリティ」という言葉に注目。知らない言葉でした。
広告用語で「読みやすさ」だそうです。この言葉が、読みにくーい!
と思いましたが、小説は、一気読みでした。

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水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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