はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
[1314]  [1313]  [1311]  [1312]  [1309]  [1310]  [1306]  [1308]  [1307]  [1295]  [1305

睡蓮の浮く水の底

上野は東京都美術館に『モネ展』を観に行った。
夏に旅したパリ、オランジェリー美術館で観られるとばかり思っていた『睡蓮』を、まさかの改装中で見逃し、思いは募っていたのだ。それを空の上で誰かが見ていたかのように、チケットが降ってきた。偶然にも泊まったホテルのパックに、チケットがついていたのだ。
「これはもう、行くしかないよね」
娘の引っ越しの翌日、久しぶりに上野を歩いた。不忍池を散歩するような感覚で、美術館に足を踏み入れた。しかし、散歩するかのようにのんびりとモネを観て歩くことはできなかった。ものすごい人だったのだ。人いきれに疲れ、絵を観る気持ちは、たぶんその場の雰囲気にずいぶん左右されることだろうと、冷めた気持ちになっていった。

だが、睡蓮を描いた一番大きな絵の前に立った途端、覚めていた気持ちなど、すっかり何処かへいってしまった。
一瞬にして、透き通った水の底を覗きこんだときのように、不意に吸い込まれてしまうかのような危うい感覚に襲われたのだ。
モネは連作『サン・ラザール駅』で、蒸気の向こうにある機関車の漆黒を描きたかったのだという。駅や機関車を描きたかった訳ではなく、蒸気や煙の向こうに見える世界を描き出したかったのだと。
睡蓮の浮く水の底には、何を見て、何を描こうとしていたのだろうか。

晩年、白内障をわずらい、色彩感覚のバランスを失いつつも描き続けたモネ。蒸気の向こうの、水の底の、見えない部分まで目を凝らし、心を傾けて描いていたからこそ、描き続けることができたのかも知れない。

上野は、初冬の透き通った陽射しがまぶしく暖かでした。

〈「睡蓮」、画家が最後まで手放さなかった一枚。〉
86歳で亡くなるまでモネの手もとにあった絵が、展示されています。
今週末、13日、日曜日までです。



拍手

07 2019/08 09
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
ご意見などのメールはこちらに midukisae☆gmail.com
(☆を@に変えてください)
Template by repe