はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
[445]  [443]  [442]  [441]  [440]  [439]  [438]  [437]  [436]  [435]  [434

雨がもたらす小さな変化達

傘を買った途端、雨がやんだ。
「雨が降ったら傘さして、傘がなければ濡れていく。そんな人生が丁度いい」
その昔CMで流行った言葉が身上のわたしだが、持ち歩いていたパソコンを濡らしたくなく、ゲリラ豪雨を予感させる雷に脅されるように、傘を買ったのだ。途端に、雨はやんだ。よくあることである。

すれ違う人のなかには「傘買ったのに、雨やんじゃったよ」と、苦笑しつつ友人に言う人あり、雨がやんだことに気づいているのかいないのか、傘をくるくる回しながら歩く小学生男子あり、濡れたレースの日傘を傾げて日がさすのを確かめ、そのまま日傘としてさして歩く老婦人あり、また、駅のトイレには忘れられた傘もあり。
世の中は進化し続けても、雨が降るだけで、人はそうして右往左往し小さなドラマのワンシーンが生まれたりもする。

何年も前の話だが、夫と喧嘩をした。3日ほど口をきかなかった。口はきかずとも食事は作り共に食べ、彼のスーツにアイロンを掛けた。
そして会社に行く時には玄関まで見送りに出た。見送りに出ても、口をきけないからすることもない。なのでわたしは、昨日の雨で濡れた傘を干し始めた。子ども達の傘。わたしの傘。夫の傘。
パーン、パーンと傘が開いていく。パーン、パーン、パーン。夫とわたしの間で、傘が開く音だけが鳴っていく。だが細くたたまれた傘が大きく丸く開くその瞬間、変化が起きた。不思議なことに、ふたりの気持ちが同時にするりとほどけたのだ。気がつくと顔を見合わせて、笑っていた。
傘を開くと、今でもその時のことを思い出す。

買った傘は晴雨兼用で、シックなピンク色。これから活躍してもらおう。

庭に干したら、ナナカマドの木の影が映って素敵な模様になりました。

傘を干して上を見上げると、もう、秋の空かなぁ。

拍手

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
ご意見などのメールはこちらに midukisae☆gmail.com
(☆を@に変えてください)
Template by repe