はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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夜のマドリードで 2

最後の夜は、マドリードで過ごした。
ガンバス・アル・アヒージョが有名な店で、スタンディングで飲み、その後、3度目となる、ふたりお気に入りのバルへと足を運んだ。

特別有名ではないと思われるそのバルは、昨年の旅で、初めて飲みに行った。マドリードの喧騒のなか、それを味わいつつもゆったりくつろげる雰囲気に、訳もなくわくわくしたことを覚えている。
今回も2日目の夜、地下鉄2駅半ほど歩き、そのバルへと飲みに行った。
店は混んでいて、カウンターの隅で、ふたり背の高いスツールに腰掛け、わりと静かに飲んでいた。わたしは、ビール。夫は白ワイン。何を話すでもなく、カウンターのバーテンダーを観ていた。ひとり忙しく立ち働く彼の仕事ぶりが、まるでショーでも観ているかのように、素晴らしかったのだ。
生ビールやワインを注ぎ、タパスを盛り付け、グラスを洗い、カクテルを作る。動きに無駄がないだけではなく、美しい。時にカウンター席の客と短くしゃべり、言葉が通じないわたし達にも、何度となく笑顔を向けてくれる。

夫が、彼の作っているカクテルを観て「ピナコラーダ」と、つぶやいた時。
彼は「ビンゴ!」とでもいうように、親指を立て、ウインクした。そして、そのピナコラーダの残りを小さなグラスに注ぎ、すっとわたし達の前に置いた。その仕草が、何ともかっこよかった。もう、参ってしまった。

そんなこともあり、最後の夜はそのバルで、と決めていた。
「彼、覚えてないよね?」「まあね。彼らからしたら、東洋人はみんな同じように見えるかも知れないし」「かもね」
などと話しつつ、やはり満員の店のカウンターの隅に座ると、なんと、彼が握手を求めてきた。
「やあ、また来てくれたんだね」
言葉はなかったが、そう言っている。わたし達も、笑顔と握手を返した。そしてその夜も、彼のショーに見とれつつ、ふらふらに酔っぱらったのだった。

そうそう。その彼が、ふと外を見てつぶやいた。「lluvia(ユビア)」
雨のことである。覚えた単語のなかの一つだ。わたしも振り向いて外を見た。静かに雨が、降り始めていた。あまり役に立たなかったわたしのスペイン語だが、その瞬間、ああ、勉強してよかった、と思えた。

タパスを盛り付ける、彼。一つ一つの仕事が、とても丁寧です。

わたし達がオーダーしたハモン・セラーノをカットする、彼。
 
えも言われぬ美味しさの、ハモン・セラーノ。

これは、昨年の写真です。この並んだグラスが目印になりました。
 
なんでもない風景が、お洒落に見えてしまいます。
☆2度目のスペイン旅日記も、今日で最終回。読んでくださった方、
ありがとうございました。明日からはまた日々徒然かいていこうと思います☆




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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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