はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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小さな彼の大きな驚き

山椒の新芽が葉を広げたので、筍が食べたくなった。
春だなぁとうららかな気持ちで、柔らかい山椒の葉を摘む。指先に匂いが移り、それを嗅がなくとも風にのってつんと尖った匂いが届く。いい季節だ。

家に戻り、ネットで筍レシピを検索していたら、新たな発見があった。
「シナチクって、筍だったんだ!」発見を、娘に自慢しようと話すと、
「そうだよ。知らなかったの?」と、つれない返事。
「えーっ? 知ってたの?」「とーぜん」
「シナチク目、シナチク科、シナチク属のシナチクさんだと思ってたのに」
自分の知識の少なさは認識していたが、キャベツとレタスの区別がいまだできない彼女に負けるとはショックだった。しかし、人間知らないことの方が遥かに多いのだ。知らないということは、新たな発見や驚きに出会うチャンスが未知数にあるということでもある。

ふと、以前特急あずさで近くの席に座っていた「新たな発見」をした子のことを思い出した。確か4歳くらいの男の子だった。大人しくパンを食べていたのだが、発見した驚きを母親に伝えたくて、つい声が大きくなったようだ。
「お母さん!見て見て、すごいよ! このパン、クリーム入ってる!」
クリームパン初体験だったのだろう。母親は、恥ずかしかったのか「はいはい、そうね」と小声である。しかし母親の態度に、自分の大発見を理解してもらえていないと彼は思い、さらに声高に訴えた。
「すごいんだよ! だって、パンの中にクリームが入ってるんだよ!」
「わかったから」さらに声が小さくなるお母さん。
「ほんとだよ! ほんとに、パンにクリームが入ってるんだよ!」
彼が驚きを身体じゅうで感じているその瞬間に出会えたことは、わたしには、忘れていた何かを思い出させてくれた心に残る出来事となった。
果たして大人になった彼は、あの驚きを覚えているのだろうか。

山椒を摘んでいると、びっきーが犬小屋から出て不思議そうに見ていました。

筍の木の芽和え。木の芽はたっぷりあるので、おかわり自由です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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