はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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傘が帰る家を間違える理由

会社の近くに、パンとワインが美味しい店があるというので、夫と出かけた。
荒木町の『chiori』天然酵母の手作りパンとワインに合った料理を出す、夫婦でやっている小さなワインバーだ。

静かに雨の降る夜だった。予報も1日雨だったので、長傘を持って出かけた。
くすんだピンクと白と明るいターコイズブルーで、鳥達が羽ばたいている柄。お気に入りの傘だ。気に入った傘があると、雨の日も、心が軽くなる。しとしと降る冬の雨は、地面に、また建物に、街の木々に、ゆっくりと吸い込まれていくかのようだ。

『chiori』に着き、木製のドアを開けると、やわらかな灯りが温かく迎えてくれた。外の雨のこともすぐに忘れ、わたし達は、家に帰ってきたような気持ちになり、席に着いた。奥さんの作る料理は、美味しいだけではなくお洒落で工夫されていて、天然酵母にこだわっているというパンは、かりっと焼いてあって、口に入れると香りが広がり、素敵に美味しかった。
夫は疲れていたようだったが、美味い料理があるとワインも進む。そのワインが美味ければ尚更である。
特別、何をしゃべった訳でもないが、楽しい晩餐となった。

帰りに、忘れずにふたり傘を広げた。雨は少しだけ強さを増して降り続いており、傘を忘れる心配もなかった。傘をさした時に、何かが引っかかったが、気にも留めず歩き出した。
だが、しばらくして、その大きさもさし心地もピンクの色合いも似ている傘が、よくよく見ると、自分の物ではないことに気づいた。
「あー、傘、間違えた!」「うわ、戻るしかないな」
温かみのある木製のドアの前で、わたしの傘は心細そうな表情で待っていた。
「ごめんね。だって、似てたんだもん」と、言い訳するわたしに、
「全然、似てないじゃん」と、夫。
そして、ようやくさっき引っかかったことに思い当たった。
「あ、わたしの傘って、ワンタッチだったんだ。便利だー」
そう思ったのは、いつもの傘にはワンタッチ機能がないからなのだが、何事も受け入れる性質(たち)であるわたしは、マイ傘が便利になったことを素直に喜び、疑いを挟む余地を持たなかった。

こうして多くの傘達は、帰る家を間違え、知らない家の傘立てで居心地の悪い思いをすることになるのだなと、納得した。
いやそれは納得するところじゃなくて、ただ単に、酔っぱらっていただけだろうって? いやー、料理もパンもワインも、最高に美味しかったです。

牡蠣が入った冷たい前菜。盛り付けが綺麗で、驚きました。
ジェノベーゼソースだけじゃなく、スパイスが効いていました。

おススメだというウニ卵。海老を使ったアメリケーヌソースが効いた
暖かい前菜です。パンにつけて食べても good!

パテとリエットと白レバーのムースなど、4種盛り合わせ。

オーダー後、1時間かけてグリルしたという、ローストポーク。
野菜も歯応えを残して、薄味で焼いてありました。

ニュージーランド産のピノ・ノワールを、ふたりで1本空けました。

メニューとランチョンマットは、シンプルな線画がお洒落です。
荒い目の曇りガラスが、窓やドア、棚にも使われていて素敵でした。
窓の外の雨は、湿った空気を感じるだけで、見えませんでした。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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