はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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ふきのとう採りの極意

寒さが和らいだ日曜の夕方、夫と、ふきのとう採りに出かけた。
この春、二度目の挑戦。一度目は、十個ほどしか採れなかった。まだ、春が浅いのだと、夫とふたり、天麩羅にして楽しんだ。
だが、もうそろそろ頭を出す頃だろうと、出かけたのだ。今度はたくさん採って、酢味噌和えにと相談はまとまっていた。

前回、採った場所は覚えている。誰かに先を越されなければ、だいじょうぶだと浮き浮きと歩いた。
「ふきのとう、出てきたかな」
呑気なわたしの言葉に「しっ!」と、夫が声を潜める。
「大きな声で、ふきのとうって言っちゃだめだよ。誰が聞いてるか判らないからね。ビニール袋も、ポケットに隠して、隠して」
彼は、いつもの場所にふきのとうがあるということを、できるだけ内緒にしておこうと必死な様子だ。仕方なく無言で歩く。程なくして、ふきのとうスポットに到着。無言のまま、探し始める。花が咲いているのが、すぐに見つかったが、それから苦戦した。
「ないねぇ」「誰かが、枯れ葉を散らした後がある」
採れたふきのとうは、たったの5個。うつむいて歩く、帰り道も無言だ。しかし、ふきのとう採りの神様は、その時、微笑んだのだった。
「あ、これ、何? もしかしたら」と、わたし。
歩く足元に、ごく普通に蕾があったのだ。砂利道だが、硬い土だ。こんな場所に? と思うようなところで、蕾を膨らませていたのである。
その時、わたし達は気づいた。自分達が抱いているふきのとうのイメージが違っていたことに。やわらかい黄緑色は、背を伸ばし花を咲かせたもので、土に埋もれた蕾は、土の色に近い紫がかった茶色をしている。そして、人が歩いた道端にも、アスファルトの隙間にも、花を咲かせる強さを持っているのだ。

それからは、わたし達の勝ち試合だった。さっき見過ごして歩いた道に、そんなに無防備でいいの? と言いたくなるほど、呆気なく見つかっていく。
「あった!」「ここにも!」「あ、そこにも、ある」
「ふきのとう採りの極意は、会得したね」と、わたし。
「これだけ採れれば、酢味噌和えじゃなくて、蕗味噌作れるな」と、夫。
帰宅後、逆転サヨナラ大ホームランを飾った今年のふきのとう採りに、缶ビールで乾杯したことは言うまでもない。いやはや。あのまま惨敗していたら、夕食タイムまでもが無言となるところだった。

こういうのを見つけようと思っていては、見つからないんです。

これが本来の姿。もっと紫っぽく土に紛れているのもあります。

カンゾウは、見つけやすくあちこちに生えているのになぁ。

こんなに採れたのは、何年ぶりかのことでした。

胡麻油で炒めて煮詰めるタイプの蕗味噌。ほろ苦さが、たまりません。

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水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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