はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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「食べる」ゲシュタルト崩壊す

「食べる」が、ゲシュタルト崩壊した。
昨日は、年に一度の健康診断だった。バリウムを飲む予定だったので、朝食は食べられない。なので、夫の分だけ用意した。
キッチンに立ち、香ばしく焼き上がった子持ちししゃもを見て、不意に口に入れたくなる。朝起きたてで、時間も6時前。空腹を感じた訳ではない。ただ、禁じられていることをしてみたい気持ちに駆られたのだ。
食べたところで、バリウム検査ができないというだけのことで、たいしたことではない。触っちゃいけないと言われたアイロンに触ってみたくなり、小さな火傷をする子どもと変わらない程度の怪我で済むだろう。子どもとて、アイロンに触りたいという熱い思いを抱えていた訳ではない。「いけない」と言われたことには引力があり、それに引き寄せられ、ふらふらと近づいてしまっただけなのだ。非常ベルの赤い色を見て、不意に押したくなる、あれである。

食べてはいけない時に食べる、その引力はたいして強くはなかった。毎年のことだ。引力のかわし方も心得ている。
だが今年は、いつになく「食べる」が膨らみ始めた。
いつもとっている行動「食べる」が、いつもと違う顔を見せ始めたのだ。考えることもなく「食べて」いたが「食べる」ということは、咀嚼し飲み込み食道を通過し胃に到達し消化されるということなのだとあらためて考えてしまう。すると普段は「美味しい」というところで考えが止まっていたことに気づく。気づいたが「食べる」一連の作業と「美味しい」がどうにも結びつかない。
「食べるって、いったい何なんだろう。ああ!」
ゲシュタルト崩壊の罠に、まんまと落ちていったのだ。

香ばしく焼けた子持ちシシャモをかじることもなく、健康診断はぶじ終わった。何も問題はなかった。今日からまた、美味しく食べ、美味しく飲める。
「お腹減ったあ」
検査結果を手に、ラーメン屋に入ったときには、崩壊した「食べる」は、すっかりもと通り「美味しい」に戻っていた。

新宿ルミネエストの塩ラーメン屋『ひるがお』の塩ラーメン。
青さ海苔の上の柚子が効いていて、細くてかたい麺が好みでした。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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