はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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あなたは受け入れすぎるのよ

江國香織『ぼくの小鳥ちゃん』(あかね書房)の一節を、ふいに思い出した。
「一羽の小鳥として、私ががまんならないとおもうあなたの欠点を教えてあげましょうか」
いつだったかそう言われたことがある。昔ここにいた― ある日いきなりやってきてやがていきなりいなくなってしまった― こげ茶色の小鳥ちゃんにだ。
「欠点?」ぼくは訊き返した。夏でぼくたちは窓をあけた部屋のなかにいた。
「あなたはうけいれすぎるのよ」
小鳥ちゃんはぼくの目をみずにそう言った。
「いけないことかな」
「ときどきとても淋しくなるの」
小鳥ちゃんは顔をあげてぼくをみた。切るようにかなしい目をしていた。

「受け入れすぎるのは、いけないことなのかな」
このシーンは、常にわたしに問いかけてきた。在るがままを受け入れてしまいがちな自分に向けて、言われているように思えたからだ。他人の言葉を額面通りに受け取りすぎたり、改善できることに目が向かなかったり、在るがままを受け入れることは、確かにいいことばかりじゃない。そして小鳥ちゃんは、
「自分以外でも受け入れたであろう僕に、淋しさを感じてたのかな」
などと考えつつ、洗濯物をたたんでいたら、オーストラリアから帰って来たばかりの娘の靴下が3本同じものと、片方しかないものがあるのに気付いた。
「これ、3本あるんだけど?」と、わたし。「あー、あるね」と、娘。
「これ、片方しかないんだけど?」「ないねー」
「もしかして、これとこれ、合わせて履いたりしてたの?」
「うん。だって、靴履いちゃえばわかんないじゃん。服とか買うお金があったら旅行とか他のこと、いろいろしたかったし」
絶句した。確かに貧乏旅行だっただろうが、さすがにそれは受け入れられない。いくらわたしでも。呆気に取られ娘を見つめたわたしは、切るように悲しい目をしていた、かも。

拾ったというツナギのジーンズのポケットに入っていた、娘の日本円全財産。
「ポケット大賞おめでとうございます」わたしは言った。
我が家では洗濯物のポケットに入っていたもので『ポケット大賞』が決まる。
「制度が変わり、洗濯物に入っていたものはすべて没収になりました」
しかし、ありえないとの一言で小銭は、娘に奪い取られました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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