はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『田村はまだか』

朝倉かすみ『田村はまだか』(光文社文庫)を、再読した。
雪が降ると読みたくなる小説は多々あれど、この冬真っ先に開いたのは、これだった。舞台は、北海道、札幌。
「札幌である。ススキノである。一杯呑み屋やスタンドが重なるように軒をつらねる狭っ苦しい小路である」からスタートする。
季節は3月。小学校の同窓会から流れてきた5人が集う、スナックのカウンター。年の頃は40だ。
「田村はまだか」繰り返されるのは、その言葉。
どうやら彼らは、同級生だった田村を待って飲んでいるらしいと、齢44のマスター花輪は、静かに酒を淹れるのだった。
ひと言でいえばいいやつ永田。腕白小僧の面影を残す池内。むかし田村が好きだった千夏。要領よく立ち回り過ぎて人生の要領を見失っている坪田。浮気がばれ離婚したばかりの祥子。5人はみな、田村を待っていた。
「ほんとうはなにもないんだ」「どうせ死ぬんだ」
ぶつけるように言い、泣きじゃくる大人びた女子、理香に彼は言った。
「どうせ死ぬから、今、生きてるんじゃないのか」
小6の教室で、田村が言った言葉は、それぞれに衝撃的だったのだ。

小説は、田村を語り、5人それぞれとマスター花輪の事情を、明らかにしていく。みなもう、小学生ではない。田村と過ごした時間より、その後の時間の方が遥かに長い。だがみな、卒業以来会っていない田村を待っていた。花輪も、会ったこともない田村を、彼らと共に待ちかねるような気持になっていた。
春まだ遠い3月のススキノ。寒さから遮断された小さなスナック。
その場所を連想しつつ、真冬の温かな部屋でページをめくりながら、正反対とも同じとも思えるふたつのことを考えた。
「人はいずれ、死ぬんだ」そして「わたしは今、生きているんだ」と。

読み終えると、最後のページに、レシートが挟まっていました。
4年前のちょうど今頃の日付け。やはり、冬に読みたくなる小説なんですね。
あの時、書店の壁いっぱいに立てて並べてあったのも冬おススメだからかな。
雪が降る冷たい夜に、どうぞ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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