はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『はぶらし』

近藤史恵の『はぶらし』(幻冬舎文庫)を、読んだ。
解説の書評家、藤田香織はかいている。「極めて切実な女子小説でもある」と。また、帯には「心理サスペンスの大傑作!」とある。サスペンスの色濃い女子小説ということか。
十年以上会っていない、高校時代、親友というほどではないにしろ、まあまあ仲が良かった同級生から突然電話が鳴った。「今すぐに相談したいことがある」真夜中である。近くまで来ているという彼女の言葉に、ファミレスで待ち合わせることにしたが、そこには、行くあても金もない7歳の子どもを連れた、やつれた友がいた。
「あなたなら、どうしますか?」と言外に言っているのが、この小説だ。

「一週間だけ泊めて」と拝み倒され承知した主人公、鈴音は36歳、独身の脚本家。子どももいない。居候することになった水絵は、甘い顔を見せれば見せるほど頼ってくる。以下本文から。

「鈴音は・・・うまくいってるもの」「え?」
「鈴音は、ラッキーで恵まれてるもの。仕事もうまくいっているし、旦那や子供に時間を取られることがないし・・・そんな人は滅多にいない」
はっとして、鈴音は彼女を見た。
「鈴音が脚本書いた映画、いっぱい見たわ。売れてる役者さんがいつも出てて、わたしとは違う世界で仕事しているようでまぶしかった」
「裏方だわ。役者さんたちと直接会うことだってほとんどないし」
もちろん、どうしても会いたいと主張すれば会えることもあるだろうが、鈴音はあまりそういうことに興味がない。役者は役者で、華やかそうに見えても現場は過酷な仕事だ。お互いの持ち場でちゃんとやれてればいいと思っている。
「でも、収入だって普通よりずっと多いんでしょ。ほかの人とは違う」
水絵はもう一度繰り返した。
「恵まれてるわ・・・鈴音は」
ようやく、なぜ水絵が鈴音を頼ろうと考えたのかが理解できた。一見派手に見える職業で、独身で、子供もいない。だから頼ってもいいと考えたのだ。

「人」という字は、支え合い成り立っているとは、よく言うことだが、支え合うことと、寄りかかることは違う。人と人とは助け合うべきものだということは判るけど、と 鈴音は思う。いったい何処まで助けるべきなのだろうかと。

買って返すからと、鈴音に歯ブラシを借りた水絵。返し方が微妙でした。
人と人との歪みはいつも、小さなところから始まるのかも知れません。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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