はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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小さな記憶スペースの中に

庭のすずらんが咲き始めた。花は小さいが眩しい白。風に吹かれるその姿は、本当に鈴の音を鳴らしているかのように、可愛く揺れる。
花の可愛らしさに加え「すずらん」という爽やかな響きのせいか、日本中に「すずらん通り」と名付けられた商店街があると聞く。
かく言うわたしも「すずらん」と聞いて、最初に思い出すのは「三井住友銀行 すずらん支店」だ。

人の記憶とは不思議なものだ。自分の忘れっぽさに辟易しているわたしだが、そのぽっちりしかない頭の中の記憶スペースに、あまり必要ではないものが詰め込まれているのを感じることがある。
「三井住友銀行 すずらん支店」とは、毎月振り込みがある外注先の支店名だ。経理を仕事とするわたしは、銀行の支店統合が頻繁だった一時期から、登録済みの振込先さえ毎月確認しなくてはならなくなった。覚える必要は何もない。正確に確認すれは済むことだ。しかし「すずらん」は、小さな記憶スペースから「三井住友銀行 すずらん支店」を取り出してくる。

でもまあ、こんな記憶も余計なことばかりではない。社長である夫と話していて「A社のBさんが」と言われ「はいはいA社のね」と、すぐに社名がわかったり、C社の支店名から本拠地は関西だとか想像できたりと、話が通じやすくなることも多い。もちろん一緒に仕事をしていればいいことばかりという訳にはいかない。わたしのミスで家庭の雰囲気まで嫌な感じになったりもするし、
「お父さん、先月出張日当、ずいぶんもらってたよね?」「そ、それは……」
などと、夫には都合が悪いこともあったりする。
それでも、いいことの方が多いと思っていたい。夫の会社も、今年で設立20年を迎える。ただ庭で、静かに笑うように揺れるすずらんを眺めつつ、末娘がお腹にいる時に、言い出しにくそうに「会社創りたいんだけど」と、彼が言い出したのを思い出した。

すずらんの繁殖力たるや、びっくりさせられます。雑草達もたじたじ。
すずらん付近に生息しようとするのはスギナくらいです。
根には毒を持つというすずらん。可愛い顔して、食えないやつかも。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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