はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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話すこと、聞くことがあってこそ

宮部みゆきの時代物は、これまで手を付けなかった。現代ミステリーのみ読んでいた。ファンタジーには挑戦はしたものの、読み終えることはなかった。時代物は完全に食わず嫌い。しかし、友人にオススメをセレクトしてもらい、初めてその敷居をまたいだ。
読んだのは『おそろし―三島屋変調百物語事始』(角川書店)曼珠沙華の赤で鮮やかに彩られた表紙をめくると、花や手毬の和紙に目を魅かれる。装丁からもこだわりにこだわって作られた本だとわかる。

江戸は神田三島町の袋物屋、三島屋(みしまや)が舞台。17歳のおちかは、ある事件があってから心を閉ざし、実家を出て叔父の店、三島屋で働くことになった。他人に心を閉じたおちかを案ずる叔父の計らいで、人々はおちかに語り始める。胸の奥に秘めた不可思議な自分の物語を。「百物語を聞く」それが、三島屋でのおちかの仕事となったのだ。
百物語とは、日本の怪談会のスタイルで、百本の蝋燭を灯し、代わる代わる怪談や不思議話、因縁話などを語る。百の話を語り終え百本目の蝋燭を消すと本物の怪が現れるという言い伝えがある。おちかが聞くのは1対1で明るい昼間だが。一人目は曼珠沙華の花に人の顔を見る老人。二人目は屋敷にたたられた美しい女。三人目は、おちか本人。四人目は、悲恋の末、亡くなった姉の手鏡の話をする女。
おちかは、語りに心を傾けるうち、自分の傷とも向きあうようになっていく。
そしておちかに語った人々も、それぞれ自分のわだかまっていたものに向き合おうとしていく。
話すことの力、聞くことの力。その大切さを再認識した。
わたしには百物語と呼ぶような類の物語はないが、小さな出来事を家族や友人と、あーでもないこーでもないと話すこと聞くことがなければ、どんなにか無味乾燥な毎日になるだろうと改めて考えた。考えて、ぞっとした。読んだばかりの怪談よりも、余程の恐怖を覚えた。それがあってこそ生きているんだと実感した。小さな幸せをまた、見つけた。

町の洋裁教室で教わって作ったパッチワークの巾着袋。
三島屋の袋物とは、全く違うとは思いますが、一応披露します。
内側は違う布で、ポケットも付けました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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