はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『椿山課長の七日間』

浅田次郎の長編小説『椿山課長の七日間』(朝日新聞社)を、読んだ。
2002年に出版されたときに新刊で購入したものだから、13年ぶりに再読したことになる。本屋で文庫が出ているのを見て、読みたくなったのだ。
覚えていたのは、デパートの中年課長が突然死に、初七日までの七日間、やり残したことを片づけるために現世に戻る。生きている人達に気づかれてはならないため、仮の姿となる肉体を与えられるのだが、生き返ってみて驚く。キャリアウーマン然とした美女になっていたというところまでだ。以下本文から。

父も息子も妻も、そして最も信頼していた部下までもが、自分に対して大きな秘密を隠し持っていた。
(ちょっと待ってよ・・・まさか・・・)
歩きながら頭の中のパズルが、ひとつの形になった。
(うそ・・・うそよね)
仮の肉体が持っている脳ミソは、どうやら椿山課長よりは上等であるらしい。いや、女性の思考力はこうした問題を解くのに適しているのだろう。
嘘は誰にとってもつらい。秘密は苦痛である。ならばなぜ、彼らはみな秘密を持ったのだろう。それぞれの秘密が緊密に結びついているとしたら ――。

椿山課長は、生きている間知らなかった事実を次々と知ってしまう。
そして、そんな彼の物語に、同時期に現世に舞い戻った二人、人違いで殺されたやくざの親分、武田と、交通事故死した小学2年男子蓮ちゃんが、複雑に絡んでいくのだった。現世にいる間に正体がばれてしまうと、地獄送りになるらしい。果たして彼らはぶじ成仏できるのだろうか。

本文中にあるように、秘密を持つことは苦痛だ。正直な人ほど、辛いことだろう。現世に戻った3人も「自分だ」と言えない辛さを味わう。それでも人は嘘をつき、秘密を持つ。そんな人の心根の深い部分を描いた小説だった。

スタバでスペアミントグリーン(緑茶 + スペアミント)を飲みながら。
この小説は、朝日新聞の夕刊に連載されたものだそうです。

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水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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