はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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人生の至る所に仕掛けられている葱の青い部分

暗がりで、転んだ。新鮮な葱の青い部分を、踏んだのだ。
踏んだ右足は、後ろに滑り、前のめりに転んで膝小僧をしこたま打った。
「だいじょうぶ!?」夫が、飛んできた。
暗がりとは言っても、家のなか。キッチンからリビングに向かう途中である。我が家の照明は、暗い。
「なんで、こんなとこに、葱があんの?」と、わたし。
確かに、有機栽培のはち切れんばかりに新鮮さを漂わせる葱を買った。ラタトウィーユに入れるには、最適のよくしまった葱だったからだ。ラタトウィーユには、白い部分のみ入れた。だが、青い部分は、まだキッチンに置いてあり、落とした覚えはない。

「突発的な痛みは、怒りを呼ぶんだよ」
とは、ずいぶん前に通っていた整体師の言葉だ。2階の天然木の手すりが痩せて、体重をかけた途端落ち、腰を打ってしまった時、お世話になったのだ。
「いやー、怒りより、手すり直すの手配しなくっちゃとか、お金かかるなぁとか、考えましたけどね」と、わたし。
「女性は、現実的だな」と、呆れ顔で言われたのを覚えている。
今回も、怒りはなかった。ただ、こういうトラップは、人生の至る所に仕掛けられているのだと、静かに考えつつ、足首をひねっていないか、確認した。
そしてただ、何故葱が落ちていたのか判らぬが、自分の仕業以外に考えられないことから、転んだのが夫ではなく自分でよかったと、打算的に考えるのだった。何しろ、整体師の言葉通りならば、男は、突発的な痛みに怒りを覚えるものなのだから。
「だいじょうぶ。骨は折れてないし、ビールもこぼしてない」
片手に缶ビールを持ったまま転んだわたしの言葉に、夫は、呆れ顔で食卓に戻るのだった。

春。人生の至る所に仕掛けられている葱の青い部分も、新鮮で滑りやすくなっている。一歩一歩、注意して歩くに越したことはない。自分に限って、そんなことは絶対にないと思っているそこのあなたも、どうぞ、ご注意あれ。

夏によく冷やして食べるのもいいですが、冬に熱々を頂くのもまたよし。
長葱を入れるのが、我が家風です。

近所の畑の、葱です。見るだけで滑りそうだと、つい思ってしまいます。
明野の畑にも、少しずつ春が来ているんですねぇ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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