はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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春が来たよ、びっきー

毎朝、我が家の前を犬が通る。もちろん、犬だけではない。飼い主も通る。散歩コースにするのに気持ちのいい道なのだろう。
3か月前、びっきーが13歳で死んでから、犬を見る度に胸が痛むものなのかと覚悟していた。しかし、そんなふうに思う朝は一度もなかった。捨て犬だった雑種の彼と重ね合せるほど似た犬に会っていないこともあるが、他の犬とは全く違うのだと、頭ではなく胸の奥の部分で認識していたことを、今になって知ることとなった。
びっきーを思い出さないというのとは違う。玄関横の彼の小屋には、今でも声をかける。
「びっきー、ただいま」
リビングにはまだお骨があり、雪が解けたら埋めてあげようかと相談したりもしている。だがもう、胸が痛んだりはしない。静かに眠る彼の安らかな心持ちが判るのだ。

よく晴れた週末、久しぶりに土いじりをした。伸びすぎたツルムラサキを切り、落ち葉を除くと、先週取り残したふきのとうが出ているのを見つけ、クリスマスローズが蕾をつけていることに驚き、気持ちよく汗をかいた。
夫が落ち葉を集めるカサコソという音。頬にあたるやわらかな風。そして、湿った土の匂い。そのとき、不意にびっきーを思い出した。濡れた鼻をひくひく動かし、土の匂いを嗅ぐびっきーを。
頭でも胸の奥でもなく、彼と一緒に嗅いだ土の匂いを身体に感じて、びっきーがすぐそこに居るかのように思い出したのだ。
一つ思い出すと、記憶は堰を切るようにして押し寄せてきた。何かを探し土を懸命に掘る力強い前足。落ち葉を踏む音を楽しみつつ歩くピンと伸びた耳。陽だまりで眠る安心しきったような背中。
「びっきー・・・、春が来たよ」
土いじりの手を休め、暮れていく早春の空を、しばし仰いだ。

ふきのとう、3つ発見! 大人になっても楽しい宝探しです。

このところ、毎日食卓に登場するイタリアンパセリ。

大雪の下に埋もれていて、あきらめていたから、なお嬉しい。
クリスマスローズの濃いピンクの蕾です。

春の空気を思いっきり吸い込むには、こうしてみてください。

ハァハァ。ちょっと息が切れました、失礼。
うーん、撹拌された春が、身体じゅうに満ちていきます。
胸の奥でも、頭を出したばかりの小さな芽が、草の匂いを放っています。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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