はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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時間は人を変えていく

どのストーリーも時同じくして読んだのに、ひとつの物語だけが印象に残っている短編集がある。
宮部みゆき『人質カノン』(文春文庫)だ。
帯の奇抜さとセンスに魅かれて買った文庫は、リビングに置いておくと、娘たち二人もそのインパクトにやられたのか、それぞれ部屋に持ち込み読んでいた。6、7年前になるだろうか。

表題作でもない二つ目に収められた『十年計画』は、読んだ時に「似てるけど、正反対」と思った短編小説があり、それがものすごく好きな小説だったこともあり、忘れられないストーリーになっている。
「似てるけど、正反対」なのは、山本文緒『絶対泣かない』(角川文庫)に収められた『今年はじめての半袖』手ひどい失恋をして、職までも失った20代の女性。傷つき、男を恨み、人生が変わった。それは、ふたつの短編の共通項。その二人の女性が取った行動、必死に働くというのもまた、共通項。違っていたのは『半袖』の女性は、両親が死ぬまでは死ねないが、その後、自殺しようと考えた。『十年計画』の女性は、タイトル通り十年後に、男を殺そうという計画を立てた。

「あたしはね、お嬢さん。人をひとり殺してやろうと思って、それで運転免許を取ろうと決めたんです」
ちょっとの間、わたしは黙った。顔には笑顔が張りついたままだったと思う。

『十年計画』の女性はタクシードライバーで、客であるわたしに、昔語りをする。もちろん殺人計画は、遂行されなかった。こうして昔語りをしている時点で、明確である。ハートウォーミングストーリーと銘打つ映画のような華やかさはないが、こういう短編に出会うと、ああ、本が好きになってよかったと、小さく微笑んでしまう。心がほぐれ、解放されていく。

時間は、人を変えていく。2つの短編は、語っている。

最近読み始めた、小川洋子『人質の朗読会』と一緒に。

腕時計をつけるのは、苦手です。だから時間が止まっているのかなぁ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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