はりねずみが眠るとき
昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
『キアズマ』Kindle版
Kindleで読んでいた『キアズマ』(新潮社)を、読み終えた。
自転車ロードレースに挑む若者達の物語だ。たがいのホイールを交換するシーンで、魂や命といったものまでもをホイールに託し託され乗せていく、彼らのロードレースに対する熱い思いを描いている。「キアズマ」とは、相同染色体同士の接着点のうち、染色体の交換が起こった部位をいう。ホイールを交換する間に交わる形のないものを「キアズマ」と重ねたタイトルだ。
トモス(オランダ製の原動機付自転車)に乗る入学したての大学生、正樹は、自転車部の学生達のロードバイクに追いかけられ、転倒した拍子にトモスで怪我を負わせてしまう。全治十か月の怪我をしたのは自転車部の部長だった。彼は意外なことに、走れなくなった自分の代わりに、正樹に自転車部へ入部してくれと持ちかけてくる。エース櫻井のアシストが必要だというのだ。正樹は、2年生でヤンキーっぽい関西弁の櫻井に振り回されつつ、ロードレースの魅力にとりつかれていくのだった。
せっかくKindle版で読んだので、Kindleならではの紹介をしようと思う。
Kindleは栞も挟めるが、ハイライト(マーカー)を引くこともできる。そしてそのハイライトは、同じ本を読む人に共有される。いいな、と思った文章にハイライトが引かれることが多いと思うが、何人もがマーカーを引いた個所に、例えば5人なら「5人がハイライト」と表示される。こんな箇所だ。
半年後、もしくは一年後、必死に頑張り続けたら、いつか俺の手にきらきらしたなにかが引っかかってくることはないだろうか。
どこまで行けるか試してみたい。自分を追い込んでみたい。
遠くに見える櫻井の背中を見ながらペダルを踏む。追われる側よりも追う側のほうがアドレナリンが出る。決して悪い状況ではない。
「でもな、正樹。俺の好きな選手が言ってたよ。〈運がよくないと勝てない。だが、運がいいだけでは勝てない〉ってな」
俺は息をのんだ。
「お前は運がいいだけで、必死に勝利を狙ってきた百人以上の選手を蹴落として頂点に立てたと思うのか?」
自分が悲観的なのか、楽観的なのかわからない。
だが、どちらにせよ、思い描く未来は明るいほうがいい。あとで失望することになったとしても。このレースだってそうだ。きっと勝てる。俺はひとりで走っているのではないのだから。
などなどである。
『サクリファイス』シリーズのなかで唯一、ミステリー要素がなかったのが個人的には残念だが、ドラマとしてじゅうぶん楽しめる小説だった。
そうそう。Kindleで読んだことで、唖然としたことがあった。本ならあと何ページくらいかなというのが手に持った感触で判る。なので驚いた。
「うそ! ここで、終わり?」
特に唐突に幕を閉じた訳ではなかったが、まだまだ続くと思っていたのでショックだったのだ。ちなみに、残り何ページなどと確認もできるらしいが、わざわざしなかった。正常性バイアスが働き(?)情報を見ようともせず、まだまだ読みたーいという願望が受け入れられるものと信じてしまった。
そんなこんなでKindleはまだまだ使いこなせてはいないが、自転車ロードレース青春小説『キアズマ』は、読み終えるのが惜しいほどにおもしろかった。
やっぱり表紙は、本の装幀には勝てないでしょう。
自転車ロードレースに挑む若者達の物語だ。たがいのホイールを交換するシーンで、魂や命といったものまでもをホイールに託し託され乗せていく、彼らのロードレースに対する熱い思いを描いている。「キアズマ」とは、相同染色体同士の接着点のうち、染色体の交換が起こった部位をいう。ホイールを交換する間に交わる形のないものを「キアズマ」と重ねたタイトルだ。
トモス(オランダ製の原動機付自転車)に乗る入学したての大学生、正樹は、自転車部の学生達のロードバイクに追いかけられ、転倒した拍子にトモスで怪我を負わせてしまう。全治十か月の怪我をしたのは自転車部の部長だった。彼は意外なことに、走れなくなった自分の代わりに、正樹に自転車部へ入部してくれと持ちかけてくる。エース櫻井のアシストが必要だというのだ。正樹は、2年生でヤンキーっぽい関西弁の櫻井に振り回されつつ、ロードレースの魅力にとりつかれていくのだった。
せっかくKindle版で読んだので、Kindleならではの紹介をしようと思う。
Kindleは栞も挟めるが、ハイライト(マーカー)を引くこともできる。そしてそのハイライトは、同じ本を読む人に共有される。いいな、と思った文章にハイライトが引かれることが多いと思うが、何人もがマーカーを引いた個所に、例えば5人なら「5人がハイライト」と表示される。こんな箇所だ。
半年後、もしくは一年後、必死に頑張り続けたら、いつか俺の手にきらきらしたなにかが引っかかってくることはないだろうか。
どこまで行けるか試してみたい。自分を追い込んでみたい。
遠くに見える櫻井の背中を見ながらペダルを踏む。追われる側よりも追う側のほうがアドレナリンが出る。決して悪い状況ではない。
「でもな、正樹。俺の好きな選手が言ってたよ。〈運がよくないと勝てない。だが、運がいいだけでは勝てない〉ってな」
俺は息をのんだ。
「お前は運がいいだけで、必死に勝利を狙ってきた百人以上の選手を蹴落として頂点に立てたと思うのか?」
自分が悲観的なのか、楽観的なのかわからない。
だが、どちらにせよ、思い描く未来は明るいほうがいい。あとで失望することになったとしても。このレースだってそうだ。きっと勝てる。俺はひとりで走っているのではないのだから。
などなどである。
『サクリファイス』シリーズのなかで唯一、ミステリー要素がなかったのが個人的には残念だが、ドラマとしてじゅうぶん楽しめる小説だった。
そうそう。Kindleで読んだことで、唖然としたことがあった。本ならあと何ページくらいかなというのが手に持った感触で判る。なので驚いた。
「うそ! ここで、終わり?」
特に唐突に幕を閉じた訳ではなかったが、まだまだ続くと思っていたのでショックだったのだ。ちなみに、残り何ページなどと確認もできるらしいが、わざわざしなかった。正常性バイアスが働き(?)情報を見ようともせず、まだまだ読みたーいという願望が受け入れられるものと信じてしまった。
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やっぱり表紙は、本の装幀には勝てないでしょう。
HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
ご意見などのメールはこちらに midukisae☆gmail.com
(☆を@に変えてください)
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