はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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オオムラサキの夏

「だからぁ、そこにはないって、言ってるじゃん」
何度も説得するが、相手は応じようとはしない。

ウッドデッキで洗濯物を干していたら、蝶が飛んできた。ミスジチョウにしては大きいなと思い、目で追うと、オオムラサキだった。
「ようこそ! 今年初めてだね」と、声をかける。
だが彼にとっては、今年初めてどころか、孵化したのが今年初めて。
見ていると、網戸にとまり、ストロー状の口を伸ばして網戸の小さな格子穴に入れた。そして、あれ? という顔をしてひっこめ、また別の穴に。
網戸であるから、穴なら数えきれないほどあるが、それを繰り返すばかりの新米オオムラサキを哀れに思い、教えてあげたくなった。
「穴はあるけど、蜜はないよ。食べ物は、花とか木の幹だよ」
しかしオオムラサキボーイは、聞く耳持たず、ただ繰り返すのみ。それで、
「だからぁ、そこにはないって、言ってるじゃん」
と、やや呆れた声を出す羽目になったのだ。

朝、孵化したオオムラサキが多かったのか、次々に飛んできた。クヌギの昆虫酒場を観に行くと1羽だけが賢くも蜜を吸っていたが、網戸にとまるオオムラサキも多く「蜜を吸う、練習かな?」と思い至り、声をかけるのをやめる。

新しい命は、美しい。ひと夏の命だが、新米オオムラサキ達の夏は、これから。すぐに蜜を吸うことも覚えるだろう。
宙を舞うオオムラサキ達の羽音は聞こえなかったが、目に映るその姿に、今この瞬間を生きる喜びに満ちた笑い声が、聞こえたような錯覚を起こした。
昆虫も、植物も、生き物は生まれながらに、生きる喜びや命の大切さを、知っている。人も、誰もが生まれた時には、考えずとも知っていたのだろう。
「いちばん大切なことを、忘れないようにね」
まるでそう言っているかのように、雲が広がり始めた日本の夏空に、国蝶オオムラサキはひらひらと舞い、消えていった。

羽根を開いている時間は短く、シャッターチャンスは少ないです。
昨日見かけたのは、色鮮やかなボーイ達ばかり。ガールは何処に?

練習にはぴったりの穴かも知れませんが・・・。

あ、そこには先客の蜂さんが。って、うちの軒下だよ、蜂さん!

その黄色く膨らんでいるのは、なあに?

なかなか羽根を見せてくれない子が多いなか、サービス精神旺盛な彼。

昆虫酒場にいた、賢いオオムラサキボーイです。

オオムラサキカラ―の桔梗が、庭で笑っていました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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