はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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米茄子の記憶

スーパーで米茄子を見かけた。同じ北杜市は白州町の産直野菜だ。ついなつかしくなって購入した。米茄子(べいなす)の記憶は、遠い昔にさかのぼる。

ちょうど30年ほど前のことだ。出会って間もない頃、夫が連れて行ってくれた一杯呑み屋の看板料理が、米茄子のそぼろあんかけだったのだ。夫の行きつけの店だったので、彼も、米茄子と言えば、と思い出すのはその店となる。
「なつかしいねえ」と言いつつ、しかし店の名が思い出せない。
「高田馬場だよね? 『轍(わだち)』じゃなかったっけ?』と、わたし。
「『轍』は、新宿だよ。うーん。何て店だったかな?」
結局、検索し見つけるまで、ふたりとも思い出せなかった。おやじさん一人で切り盛りしていたその一杯飲み屋は『一合目』という名だった。
「よく食べたなあ、米茄子」
購入した米茄子はオリーブオイル焼きにしたが、今度は『一合目』のそぼろあんかけを再現してみようかという話になる。
「少し、甘味があるそぼろあんなんだよね」
「うん。甘くて生姜が効いてたかな」
「そう言えば、銀杏が入ってた。そろそろ、銀杏の季節だね」
夫は、いく度も食べた味。記憶もわたしよりも深くはっきりとしたものなのだろう。わたしには、その時に初めて知った米茄子という種類の大きな茄子のインパクトの方が強かったせいもあるのか、美味しかったという曖昧な記憶のみがただうすぼんやりと残っている。
そして、米茄子の味と同じく、その頃何を考えていたのかなどは、あまり思い出せない。記憶はいくつかのシーンをちぎり絵にしたかのようにきれぎれになっていて、その一つ一つは、車窓からぼんやりと眺めた、過ぎ去っていった風景のようだ。
そのなかで、ただひとつ覚えているのは、あの頃、夫に恋をしていたということだ。それにしても、あの頃のわたしは、思いもよらなかっただろう。30年後も、その米茄子の彼と共に暮らし、ふたたび三たび、米茄子をつつきつつ、変わらず酒を酌み交わしているなどということは。

この丸っこさがまた、可愛いんですよね。アメリカの(だから米茄子)
ブラックビューティーという品種を日本で改良したものだそうです。

オリーブオイルとニンニクが沁みて、ワインにぴったり。
とろけるやわらかさには、米茄子、ただ者じゃない!と思いました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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