はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』

山田詠美『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』(幻冬舎文庫)を読んだ。ファンタジックな表紙絵からは想像もつかない、家族の死がもたらす混乱と喪失をリアルに描いた小説だ。そして、再生を。

二つの家族は、共に暮らし始めることとなった。11歳の長男澄生と9歳の長女真澄を連れた美加と、4歳の創太を連れた誠が結婚したのだ。すぐに生まれたのは女の子で千恵と名づけられた。子ども達も含め、それぞれが幸せになるための努力を惜しまず、努力した分だけきちんと幸せになっていくような、そんな家族になっていった。
3人の兄となった澄生が、17歳で突然雷に打たれ死ぬまでは。
小説は、その15年後、大人になった子ども達の視点で語られる。
真澄は30歳。大切な人を失う怖さに人を愛することの難しさを感じていた。
創太は25歳。兄の死から立ち直れない義母である母を誰よりも力づけてきたが、兄を越えられないことに傷ついてもいた。母と同じ年頃の女性と恋愛中。
千絵は20歳。大学生。兄の死後の幸せとは対極にある家族の記憶しか持たず、中学高校と、その兄が原因でいじめにあう。兄の死が変えていく家族というものを目の当たりにし、自分が今できることを考えようとする。

震災でたくさんの人が亡くなったときに、ビートたけしが言ったそうだ。
「あれを二万人が死んだ一つの事件として考えてはいけない。ひとりが死んだ事件が二万件あったと考えるべきだ」
解説の長嶋有は、この小説は、その一人の死に対してさえ、受け止め方もそれぞれ、悲しみも多様だということを、3人の兄弟達に寄り添うことによって描いているのだと言う。

人はいつか死ぬ。健康な人でも、明日、突然死んでしまうかも知れない。普段は忘れているが、頭の隅ではみな理解していることだ。小説の家族は、普段からそれを忘れることができずにいるのだろう。
死ぬまでに心の準備ができるような死に方をしたいという言葉を、同年代の人からも聞くようになった。明日自分が、または大切な人が死ぬかもしれないとは、実際には、なかなか考えられないものだ。

表紙の音楽隊は、6人家族かな。赤い屋根の家とピンク色の薔薇。
幸せを絵に描くと、こんな感じなのでしょうか。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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