はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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ケータイのない時代には戻れない

上の娘が、帰ってきた。
ヨーロッパを何か国か周り、カナダでワーキングホリデーをして、1年3カ月ぶりの帰国である。
帰路、家に帰るまでの間、WiFiが使えるところでは連絡がとれたが、WiFiが使えない場所では連絡がとれない。日本では使えないケータイらしい。
「昔は、待ち合わせしてすれ違ったりって、よくあることだったよね」
迎えに行く道すがら、ケータイがなかった頃の話を、夫とした。
到着は真夜中の0時半。JR竜王駅前の高速バスの停留所だ。もちろん、その付近でWiFiが使える場所はない。
「そうそう。よく待たされたよなあ」「それ、逆でしょ!」
などと、笑いながら話す。しかし、今回はバスの停留所で待つわけだから、すれ違いはないだろうと心配もしていない。ただ、高速バスは高速の混みぐあいで時間が読めないから、早めに行って待っているとだけ伝えておいた。
案の定、バス停には人の気配はなく、静まり返っていた。待つのみである。

30分待ち、バス到着の定刻となる。だがバスどころか、迎えの人も誰も来ない。心配しつつも、渋滞がひどかったのかとも考える。
「早く迎えに来過ぎたね」「だと思ったんだよ」
夫は助手席で、本を読んでいる。わたしも雑誌を持ってきたが、集中できない。さらにしばらく待った後、気晴らしに散歩することにした。
「ちょっと、行ってくる」と夫に声をかけ、車のドアを開けた途端、20メートルほど先に誰かの姿が見えた。のんびりとした感じで歩くその姿は遠目に見ても我が娘。のちに「幻かと思った」と夫に言わせたその姿は、まぎれもなく本物だった。のんびりモードだったのは、疲れと重すぎた荷物のせいらしい。
「バスは?」「一時間も早く着いちゃって、駅で待ってた」
「ずっと駅にいたの?」「駅に来るかと思ったんだもん」
「どうしてバスで帰ってくるのに、駅に行くんだよ?」
双方ともが、すぐ近くで待っていたとは、大笑いである。
「やっぱり、ケータイは必要だね」と、娘。
「まあいいさ。1時間後でも会えたんだから」と、わたし。
「じゃあ、1か月くらいケータイなしでも、いいかな?」と、娘。
「それは、やめてください」と、夫。
すれ違いをしつつ待ち合わせした時代をなつかしく思いながら、そのなつかしい時代に後戻りすることはできないのだと、あらためて感じる出来事だった。
さて。これから、娘との生活が始まる。

JR竜王駅近くの高速バスのバス停です。新しく作り直したばかりの
大型駐車場があります。トイレには、ウォシュレットもついていました。

スーパームーンからは何日か経ち、すっかり欠けていたお月さま。
それでも、娘が待つ夜の街を、明るく照らしてくれていました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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