はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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淋しさの入口は、夕暮れ時に開いて

淋しさの迷路に迷い込む入口は何処にでもあるのだが、特別、夕暮れ時には口を大きく開け、誰も彼もを待ち受けている。
理由などいらない。さっきまで、自分は何て幸せなんだろうと満ち足りた気持ちでいた人にも同様にゲートは開き、何ものかが甘くささやいて呼び寄せ、気づいた時には、ふらふらとなかに入ってしまっているのだ。
入った途端にゲートは閉じ「幸せって、いったい何?」と誰かが言ったと思えば「涙の海で如何に滑稽に心を溺死させるかオリンピックで金メダルを取ることさ」と何処かの物語に出て来たニヤニヤ笑いの猫が言いサッと消えていく。

そんな夕暮れに、捕まった。
びっきーを検査入院させて、迎えに行く夕暮れだ。入院といっても日帰りで、昼の間彼がいないだけのことだったが、散歩に行こうと思い「あ、いないんだ」と思い、薬をあげなくちゃと思い、またも「あ、いないんだ」と思う。急にご飯を食べなくなったのは3週間ほど前だ。それから、何度か病院に通い、薬を処方してもらっていた。
息子を保育園に預け、働いていた頃を思い出した。
抱いていた子どもを、不意に誰かに手渡したような、自分の身体の一部分を持って行かれたような気分を久しぶりに味わった。

検査結果は、よくなかった。今すぐにどうこうということではないが、内臓が弱っていて治療は難しいと言う。
「好きなものを食べさせて、好きなようにさせてあげてください」
びっきーには、夕暮れの空が見えていただろうか。

写真を撮ろうとすると信号って、意外に早く変わるんだなと思いました。

家に帰ると、1番星が瞬いていました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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