はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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恐るべし『キョウミミニチヨウ』

「ようやく肩が楽になったと思ったら、これだよ」「季節到来だね」
「親指の根元って取りにくい上に、結構痛むんだよなぁ。全く」
「ほんのちょっとのことなのに、どうして出来ないんだろうね」
「2、3本だからとか、見つからないからとか、言い訳してさ」
「天性の面倒くさがり屋だから、しょうがないとは言え」
「それも自分で片づけないで、置きっぱなしにして失くすんだよ」
「片づけられない女選手権代表だから、しょうがないとは言え」
「軍手をするひと手間で、棘なんか刺さずに済むのにねぇ、左手くん」
「薪運びの季節本番、気をつけ様がないけど気をつけようね、右手くん」

まだ完治とは言えないまでも、frozen shoulder (五十肩)の痛みが引いた右手くんと、サポート役の左手くん。言いたい放題であるが、言われても仕方のない事実。軍手をせずに薪を運んで、右手くんの親指の根元には大きな棘が刺さり、チクリと痛んでいる。薪運びは苦ではないが、面倒な部分をスキップする癖が、どうにも治らない。娘達には「危ないから、軍手しなさい」と、口うるさく言っていたにもかかわらずだ。

ところで棘と言えば、子どもの頃、よく言われた。
「抜かないと血管を通って心臓まで行って、刺さって死んじゃうんだよ」
根も葉もない嘘である。こういう判りやすいくだらない嘘って、けっこう好きなんだけど、今でも子ども達の間では、言われたりしているんだろうか。
確かに棘を抜いた方が化膿したりせず治りも早いだろう。だからそんな風に言われて来たのだ。だが人間の自然治癒力は、異物を外に出そうと働くそうだ。

結局、夫が棘を抜いてくれたのだが、余りの痛さに、
「自然治癒力に任せるから、もういい」と、半泣きでわたし。
しかし、彼は最後まであきらめない。泣こうがわめこうが、彼に頼んだ時点で、棘の行方は決まっていたのだ。末娘が幼い頃、耳かきが嫌で逃げ回っていたのを思い出す。もちろん耳かきを持って追いかけていたのは夫である。
普段は人の話に耳を傾ける夫だが、棘抜きマン、または耳かきマンに変身した時には通用しない。神戸出身の彼は、末娘によく言っていた。
『キョウミミニチヨウ』何のまじないかと思えば、今日は耳は日曜で休みです。聞こえません。聴きませんという意味の関西弁だった。耳が日曜になった彼には、何を言おうが、もはや通じないのだ。
「右手くん、ごめん。今度から軍手するから」
その言葉に右手くんは答えなかった。嘘つき、と思っているのは歴然である。
  
陽当りのいいウッドデッキの薪置場と、棘刺す気満々の薪達。
薪小屋からウッドデッキまで運ぶのは、夫がやってくれます。
彼は、皮の軍手ご愛用。必ず手袋を着用します。

右手くんがよくなり、日々の薪をウッドデッキから運ぶのは、
わたしの役目となりました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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