はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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熱燗が、美味しい季節

元来、酒飲みの夫婦である。外で飲まなければ、家で飲む。
ビールから始まり、肴が和食なら日本酒、洋食ならワイン。締めはウィスキーというのが、自然な流れだ。酒を呑まずに過ごす夜は、ほとんどない。
わたしだって、若い頃からずっと夜な夜な飲んでいた訳ではない。金もなく、趣向品である酒は、特別な時に飲むものだった。
しかし夫は、日々酒を楽しむ派だったので、もともとの能力が開花し、そろって毎晩酒を楽しむようになった。

以前は、美味しいワインは値が張り、たまにしか飲まなかった。今は千円ワインと雑誌で特集するほど、安く美味しいワインが出回っている。
なのでワインもいい。だが、熱燗が美味い季節になってきた。冷たい夜には、熱い日本酒で心根の芯から温まることだって必要になる。
お燗には温度によって粋(いき)な名前がついている。日向燗、人肌燗、ぬる燗、上燗、熱燗、とびきり燗。いちばん熱くても55℃まで。というのは山本文緒の短編集『ファースト・プライオリティー』(角川文庫)で読んだ。
日本語って素敵だと、思わずにはいられない。おまけで言えば、冷やは、涼(すず)冷え、花冷え、雪冷えと、言葉に酔いそうなほど美しい。
日向に、人肌。冬に恋しくなるものばかり。日向の方が温かそうなのに、人肌の方が温度は高い。33℃と37℃と、4℃差がある。人の体温というものは、普段感じているものよりも、実際には温かいものなのか。
能面がある日取れなくなってしまったまま表情を変えず、およそ血など通っているとも思えない居丈高な人だって、触れてみないとその温かさは、判らないものなのかもしれない。

東京は大田区、六畳一間のアパートで暮らしていた、新婚の頃。
「胃が疲れてるから、ビールは飲まない」と決意して帰ってきた夫に、
「お疲れさま。寒いねぇ、熱燗にする?」とわたし。
その不意打ちに、彼の休肝日計画は未遂に終わったと、のちのち聞いた。
美味い肴と美味い酒。それさえあれば、他に望むものはない?
何処かのCMではないが『そんな人生が、丁度いい』のかも。

鍋の湯に徳利を浸けてつける熱燗もよし。鈴の熱燗器でつけるのもよし。
黒織部のごっついぐい飲みもよし。薄い広口の盃(さかずき)もよし。
何年か前から、熱燗は甲斐男山の本醸造にしています。

叔父にいただいた茅ヶ崎の干物。塩気も薄く新鮮な肴(魚)でした。

行儀も何もなく、夫と娘と突つきつつ、飲みました。

肉豆腐には、山椒の水煮をたっぷりトッピングして。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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