はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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すりこぎセンチメンタル

山梨春の市、十日市場で買ったすりこぎでアボカドを磨り潰した。
白檀の枝を使ったという枝の形そのままのすりこぎ。使い心地の程はというと、ばっちりだった。小さめのマイすり鉢には長すぎると思っていたのだが、いざする段となると、これまで使っていた短いすりこぎとは違い、力が要らない。てこの原理なのだろうか。何しろ楽にすりつぶせる。「おー!」と驚きの声を上げるほどだった。いい買い物をしたと嬉しくなる。久しぶりに作ったアボカドと鮪のユッケは、また格別だった。

市ですりこぎを見つけた時に思い出したのは、川上弘美の『センセイの鞄』(平凡社)のワンシーンだった。37歳のOLツキコは、高校時代に国語を教わっていた30以上も年上のセンセイと、飲み友達である。
ふたりは、ある日喧嘩をし、同じ店で酒を飲みつつも口をきかないという日々を送っていた。巨人とアンチ巨人の、他愛もないが根も深い喧嘩だ。そのツキコが、合羽橋で仲直りにと卸金を買う。
「光っている刃物を見ているうちに、センセイに会いたくなった。そこに肌が触れれば、すっと切れて赤い血がにじみ出るだろう鋭い刃先を見ているうちに、センセイに会いたくなった。刃物の光がなぜそんな心もちを引き出すのかそのからくりは判らない、しかし無闇矢鱈とセンセイに会いたくなった」

すりこぎに刃はなく、わたしには喧嘩している相手もないが、そのシーンを思いつつ、市で手にした。物との出会いも縁。たぶん、白檀のすりこぎを使うたびにツキコの切ない心持ちを思い出すことだろう。

白くて綺麗な、でも節がしっかり残っているすりこぎです。

鮪と紫玉葱をメッツァルーナ(半月型包丁)で一緒に叩いたら、ピンク色に。
黄身を混ぜるとコクが出ます。ざっと混ぜてから、わさびソースをかけて。
味付けは、レモンとオリーブオイル、塩、粗挽き胡椒。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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