はりねずみが眠るとき
昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
『いつも彼らはどこかに』
小川洋子の短編集『いつも彼らはどこかに』(新潮文庫)を、読んだ。
タイトルの「彼ら」というのは、動物のことだ。馬、ビーバー、兎、小鷺、犬、チーター、蝸牛、竜の落とし子。8つの短編は、それら人以外の生き物と、世の中から少し外れてしまった人々の物語。そのなかには、生きてはいない者もいる。例えば『愛犬ベネディクト』は、14歳の少女が制作中のドールハウスに住むブロンズ製の動かぬ犬だ。以下本文から。
この家をこしらえるのに忙しくて彼女は学校を休んでいるのだろうか。ならば工作が完成すればまた学校へ行くのだろうか。おじいちゃんと僕はひそひそ声で話し合ったが、結論は出なかった。
「デリケートな年回りだからな」
おじいちゃんはこの一言で、事態をまとめた。
いずれにしても妹はもう二度と学校へは行かなかったし、彼女の家は延々今でもまだ完成していない。
「これはたぶん、ドールハウスというものだよ」
僕はおじいちゃんに説明した。
「ままごとに使うのか?」「いや、もうちょっと大人向けかもしれない」
「世の中にはそういう家を作って楽しむ人がいるんだな?」「うん」
「そうか。あの子が自分で編み出したのかと思ったが・・・」
おじいちゃんはため息をついた。学校へ行かないことより、ドールハウスが孫娘の発明でないことの方が、残念であるかのような口振りだった。
読んでいて、胸がしんとした。どの短編にも、普通からはみ出してしまった人を、自然体で受け入れる人が登場する。
例えば、おじいちゃんは、学校へ行かずドールハウスを作り続ける孫娘を。スーパーのデモンストレーションガールは、試食だけをして決して買おうとしない老女を。美術館の女性は、一枚の絵だけを観るためにそこまで目をつぶって歩く老人を。
一人一人、大切なことは違っていて、それが奇異に映る場合もある。それを奇異だということに捉われず、何かを大切にするという心根を見つめることができる人々を、その自然体で受け入れていく姿を、描いた小説なのだと思った。
帯と、購入した戸田書店の栞が、同色でした。
こういう気配りができる本屋さんっていいなあ、と思います。
こうして写真を見ると、紐栞がうさぎの尻尾みたい。
タイトルの「彼ら」というのは、動物のことだ。馬、ビーバー、兎、小鷺、犬、チーター、蝸牛、竜の落とし子。8つの短編は、それら人以外の生き物と、世の中から少し外れてしまった人々の物語。そのなかには、生きてはいない者もいる。例えば『愛犬ベネディクト』は、14歳の少女が制作中のドールハウスに住むブロンズ製の動かぬ犬だ。以下本文から。
この家をこしらえるのに忙しくて彼女は学校を休んでいるのだろうか。ならば工作が完成すればまた学校へ行くのだろうか。おじいちゃんと僕はひそひそ声で話し合ったが、結論は出なかった。
「デリケートな年回りだからな」
おじいちゃんはこの一言で、事態をまとめた。
いずれにしても妹はもう二度と学校へは行かなかったし、彼女の家は延々今でもまだ完成していない。
「これはたぶん、ドールハウスというものだよ」
僕はおじいちゃんに説明した。
「ままごとに使うのか?」「いや、もうちょっと大人向けかもしれない」
「世の中にはそういう家を作って楽しむ人がいるんだな?」「うん」
「そうか。あの子が自分で編み出したのかと思ったが・・・」
おじいちゃんはため息をついた。学校へ行かないことより、ドールハウスが孫娘の発明でないことの方が、残念であるかのような口振りだった。
読んでいて、胸がしんとした。どの短編にも、普通からはみ出してしまった人を、自然体で受け入れる人が登場する。
例えば、おじいちゃんは、学校へ行かずドールハウスを作り続ける孫娘を。スーパーのデモンストレーションガールは、試食だけをして決して買おうとしない老女を。美術館の女性は、一枚の絵だけを観るためにそこまで目をつぶって歩く老人を。
一人一人、大切なことは違っていて、それが奇異に映る場合もある。それを奇異だということに捉われず、何かを大切にするという心根を見つめることができる人々を、その自然体で受け入れていく姿を、描いた小説なのだと思った。
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こういう気配りができる本屋さんっていいなあ、と思います。
こうして写真を見ると、紐栞がうさぎの尻尾みたい。
HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
ご意見などのメールはこちらに midukisae☆gmail.com
(☆を@に変えてください)
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