はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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手を握らなくてはならない時と、その手を離さなくてはならない時

寒さ厳しき山梨でも、突然のぽかぽか陽気に桜は咲き始め、わらわらと何処からか湧き出したように子ども達が外に出て走り回っている。
「待って!」駅前ロータリーで、若いお母さんの声に目を留めた。
見れば、2歳くらいだろうか。そのお母さんの手を振り払って走り出したのだろう。小さな男の子が歩道を走っていく。たどたどしく危なっかしいようでいて、スピードはけっこう出ている。お母さんが追いつき手をつなごうとするが、その手をまた振り払う。
「僕は自分が思うままに走りたいんだよ」とは言葉にしないがそんな表情だ。
「わかるよ」わたしは、胸の中で言った。
「でも君はまだ、周りの危険に目を向けられるだけの経験がないんだよ」

やはり息子が2歳の頃。わたしの手を振りほどき走り出したことがあった。わたしは、娘がお腹にいて、夢中で走っても追いつくことができなかった。息子はそのまま、信号のない交差点をひとりで走り抜けた。
「誰か、止めて!」叫んでも、わたしの声に気づく人はいない。
しかし、その時車は通らなかった。だから幸運にも彼は今も元気に生きている。無理矢理にでも、強く手を握らなくてはならない時がある。若い母親は、ひとつずつ覚えていったのだと振り返る。

末娘の巣立ちの日を間近にし、クールなみずがめ座にあるまじき行為だが、センチメンタルになっているのだろうか。その強く握った手を離さなくてはならない時があると、今、自分に言い聞かせている。

昨日、韮崎駅前の桜は五分咲きでした。2日前にはまだ蕾だったのに。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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