はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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煙突掃除、完了

「明野には、秋がないよね」
娘が言う通り、山梨も八ヶ岳のふもとにある我が町明野町では、猛暑の夏が終わっても、秋を楽しむ時間は短い。すぐに寒くなることを、みな知っている。

夫も慣れたもので、秋晴れの日曜日、煙突掃除を始めた。いつでも薪を燃やせるよう、年に1度、秋の行事だ。
室内の煙突を外し、庭で煙突掃除用ブラシで擦る。真っ黒いすすがもわもわと煙を立てながら出てくる。その間にわたしが、ストーブの庫内の灰を取り除き、ふたりでふたたび煙突を取り付ける。煙突は重いし、ネジとネジ穴がなかなか合わず、取り付けで手間取るのは毎年のことだったが、今年の煙突は素直に穴と穴を合わせてくれた。おたがい知れた仲になったということか。

家の外側の煙突の先には、網がかけてある。これは、鳥が巣を作るのを防止するためだ。以前一度、夏のあいだにスズメがストーブのなかに入って来て、困り果てたことがあった。その時夫は仕事で東京にいて、途方に暮れ電話すると、くすくす笑われた。「そんなことで、電話してきたの?」と。
しかたなくビニール袋をかぶせ、ひとり恐る恐るストーブの戸を開けた。だがスズメも必死だ。わずかしかない隙間から、二階に飛んで行った。必死で逃げるあまり気が動転し、二階を飛び回り、頭などをぶつけてはまた飛んでいる。お手上げだった。虫も鳥も可愛いとは思っても恐いと思わぬわたしだが、家のなかで飛ぶものには、ひどく恐怖を覚えるのだ。
もう、キイロスズメバチに一時に8カ所刺された経験を持ち珈琲の焙煎もできる日本野鳥の会所属の陶芸家である上に山菜にも蛇にも詳しいご近所さんに助けを求めるしかなかった。電話すると、5分と待たず来てくれた。
だが彼が到着した頃には、スズメはあっちこっち飛び回り頭をぶつけ脳震とうを起こし、動かなくなっていた。そっと抱いてデッキに下ろしてもらい、ふたりで観察した。そのうち、ぶじに意識を戻し、飛んでいったっけ。
ご近所さんが、じつはスズメよりスズメバチが好きだということは、スズメ事件より何年も後で知ることとなった。

薪ストーブで、暖を取る暮らし。日々、火を眺める生活は楽しみも大きいが、一言では片づけられない思いもよらぬことが、こまごまとあるものだ。それも、もう14回目の冬を迎える。知れた仲になっても可笑しくはない年月である。とは言えできることなら、秋が長く続いてほしいものだが。
 
煙突をブラシでこする夫。芝の上でやるのは、すすが栄養になるからです。
 
家の外の煙突と、取り付けたばかりの家のなかの煙突。当然繋がっています。
外の網はかっこ悪いけど、得体の知れない焼き鳥ができるのは、ちょっとね。

今はひんやり冷たい、石造りのストーブくんですが、
早くも、熱く熱く、燃えたがっている様子です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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