はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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20年に乾杯して

成人式に、末娘は、帰って来なかった。
正月に帰省したばかりだということもあり、仲のいい友人達とは今でも会っているらしく、同窓会の意味合いも薄く、彼女にとってはまるで興味が湧かない行事だったようだ。
わたしも、夫も、二十歳の頃、やはり成人式に出席することもなく、バイトやら何ならで、忙しく過ごしていた。息子も、然りである。
「全く、こういうところは、親に似るものなんだな」
と愚痴る夫は、嬉しそうでもあった。
お祭り好きな上の娘が、義母とわたしの母の前で振袖を着てくれたので、自分達ができなかった親孝行もでき、ホッとしていたこともある。

本人不在で、スペイン産の白ワインを開け、夫と祝った。その日は、29回目の結婚記念日でもあったのだ。
「あー、わたしが料理してる間に、半分以上飲んじゃってる! ひどい!」
「そ、そんなことないよ。ほら、まだあるじゃん」
30年目突入と共に、いきなり、夫婦喧嘩で始まった宴であったが。

末娘がお腹にいるときに、夫は、会社を起ち上げた。娘が生まれた頃の話になると、それは会社が生まれた頃の話にもなる。
「生活もぎりぎりで、二人とも追い詰められてて、おたがいを思いやる余裕もなくて、よく喧嘩したよねぇ」と、わたし。
「そのなかで生まれたあいつは、希望の星だったよなぁ」と、夫。
生まれた子どもが大人になるように、会社が大きくなるわけではなかったが、その月日を思うとき、同じように成長しているのだと感じる。それは、娘と会社の年輪を見つめてきた、わたし達二人にだけ見えるものなのかも知れない。
「彼女は、希望の星だった」
夫は、ワインを空にして、ウイスキーを飲み、何度も繰り返した。
我が家で一番小さかった、いつもにぎやかに笑っていた末娘の明るさに助けられて、これまでやってこられたのだと。
「そうか。助けられていたんだ」
夫にそう言われて、すっと腑に落ちた。今でこそ海外を飛び回ってる上の娘も、明野に越して来て友達ができるまでの間、淋しそうにしていたっけ。だが家では、淋しいと思う暇もなく、妹が遊ぼう遊ぼうとくっついていた。家族みんなが、そんな風にして彼女に助けられていたのだ。
薪ストーブで熱く燃える炎を見ながら、あっという間だったとは言い難い20年を思い、わたしもまた、深く深く酔っていったのだった。

ストーブに薪を入れつつ、炬燵でまったり飲みました。
スペインで買った、うなぎの稚魚の缶詰も開けて。
昨日は、久々に二日酔い。
最後のウイスキー、やめればよかった・・・。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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