はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『高校入試』

湊かなえのミステリー『高校入試』(角川文庫)を、読んだ。
舞台は、地方都市で県下有数の進学校とうたわれた公立高校、一高。その地域では一高ブランドは、滑稽なほどに絶対だった。その入試の裏で、匿名のネット掲示板が立ち上げられる。「入試をぶっつぶす!」
そのかき込みと同時進行で、23人の視点から、それぞれの思惑や学校の様子などが語られていく。試験中に違反とされていたケータイが生徒のポケットで鳴り、答案用紙が足りなくなったと思ったら、見つかったのは他の受験番号のもの。同窓会長や議員の妻などモンスターペアレンツも登場し、教師達の保身も見え隠れする。
主人公は教師1年目の帰国子女、春山杏子。一高ブランドなど到底理解できない熱血教師だ。以下本文から。

「一高の合格発表後には、学区内の粗大ゴミ置き場に学習机が山積みにされる、っていう伝説だよ」「まさか、落ちた腹いせに?」
「逆だよ。一高に合格すれば、もう勉強する必要なし、ってこと」
「俺も、親が親戚の家から軽トラ借りてきて、一緒に捨てに行きましたよ」
気のいい後輩、相田っちがフォローしてくれる。
「じゃあ、入学後はどうやって自宅学習するんですか?」
「まあ、今はあんまり見ないかな。昔は偏差値高くても、進学する人間は限られていたから、地元の名門校、一高合格が最終目的で、そういうことをやっていたんだろうけど」

小説は、異様に思えるほどの一高ブランドへのこだわりから起こるそれぞれに巣食うどろどろとしたものをあぶりだすと同時に、匿名のかき込みによって拡散していく目に見えぬ敵への恐怖を鮮明に描いていく。

通過点。高校入試もその一つだろう。だが、通過点をただ通過点と捉えられずに、立ち戻り、引っかかり、つまずき、負のスパイラスに陥ることさえある。主役であるはずの子ども達ではなく、高校入試を通過してきた大人達の物語。同じ高校入試でも、それを見つめるアングルは一人一人全く違っていた。

フジテレビでドラマ化された同じ著者による脚本をもとに、
小説として、かき直されたものだそうです。
解説は、フジテレビのプロデューサー 羽鳥健一。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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