はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『百瀬、こっちを向いて。』

「かるく死にたくなったよ」
中田永一『百瀬、こっちを向いて。』(祥伝社文庫)に出て来た、主人公、相原(高校一年、男子)のセリフだ。相原の何処がよくてつきあってるのかと、百瀬(同級生、女子)は女子達に聞かれ、返答に困りこう答えたという。
「しょうがないから、ナメクジみたいなところがいいってこたえておいたよ」
そりゃあ、かるく死にたくもなるよなぁと、読んでいて笑った。
それも、彼らは本当につきあっている訳じゃないのだ。相原は、尊敬する先輩に頼まれ、やむなく、百瀬が彼女だという芝居をしている。誰が見ても、不釣り合いな、ふたりなのに。

野生動物のようなシンプルな格好よさを持ち、躍動するように歩く、野良猫のように挑戦的な目つきの少女、百瀬。
一方、相原は、自分自身を「人間レベル2」と客観視する。10のうちの2ではなく、100のうちの2だ。一生女の子と縁がなく、手を握ることさえできない人々の一員だと、自覚する。
自覚していたのに、好きになってしまった。百瀬に恋をした。相原は、その抱えたことのない心にともった温かな灯りを持て余し、苦しむ。そんな恋する切なさが、あわあわと描かれた短編小説だ。

ところで、最近、気づいたのだが「かるく死にたくなった」は「死にたくなった」とは、全く違う言葉だ。「ちょっと変」と「変」が違うように。だから「ちょっと変。かなり」なんて日本語として「かなり変」なようにも思うが「ちょっと変」をひとつの単語として考えると、ありかな、とも思う。「変」より「ちょっと変。かなり」の方が、言葉として軽い感じもする。柔らかく伝えること、つまりは誤魔化すことに慣れ言葉が一体化してしまったのだろう。

などと関係ないことを考えつつ、今公開中の映画『百瀬、こっちを向いて。』を観に行こうかと、検索した。
「うそ! 山梨でやってないの? なんで? 向井理が出てるのに?」
全くもう。しょうがないから『オー!ファーザー』を観に行くかと再び検索。
「うそでしょ! これもやってないの? 岡田将生、主演のエンタメだよ。なんで! ひどい! 武田信玄にいまだ恨みを持つ、東京もんの仕業か?」
独り言では、八つ当たりも空しく、空を仰ぐ。もう、かるく、そう。もう、かるく絶望するしかなかった。

アイビーの上で撮影。最初に『百瀬』を知ったのは『I LOVE YOU』でした。
伊坂幸太郎目当てで読んだ、男性作家6人による恋愛小説アンソロジーです。

庭のアイビーは、山になっています。何故か? 意味もなく置いておいた、
丸太に根付いてしまいました。いい加減な庭造りが顕著に表れています(笑)
若葉の季節の木洩れ陽は、15歳の恋を思わせますね。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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