はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『村上ソングズ』×『死ぬまでにしたい10のこと』

帰省していた末娘を送り出した、正月3日。
久しぶりに『村上ソングズ』を、開いた。村上春樹が自らのレコードコレクションから厳選した曲の歌詞を翻訳し、エッセイと共に紹介する。そして、それに和田誠がカラーの絵をいく枚もつけたという贅沢極まりない本である。

すでに最初の1曲で、読み留まり、思いを馳せた。
ビーチボーイズの『God Oniy Knows』(神様しか知らない)
目を留めたのは、映画『死ぬまでにしたい10のこと』のなかで、ヒロインがこの歌を口ずさむシーンがあったとかかれていたところだ。以下本文から。

この映画のそのシーンが、僕はとりわけ好きだった。その選曲の以外さにどきっとさせられたし、映画が終わったあとでも、そのなんでもないシーンが不思議に深く心に残った。そのように、登場人物が劇中さりげなく口ずさむ音楽ひとつで、映画の持つ味わいががらりと変わってしまうこともある。

ひとつのシーンが映画の持つ味わいを変えるというところに、共感した。だが、わたしのなかに残っている、この映画のシーンは、別のところにある。

今は二十歳になった末娘だが、幼い頃よく彼女を膝に抱き「イカダごっこ」をした。座ったわたしがイカダになり娘はしっかりしがみつく。そして「大波が来た!」と叫び、娘を大きく左右に揺らすのだ。彼女はそれが大好きだった。
その娘が中学生になった頃、わたしは『死ぬまでにしたい10のこと』を、DVDで観ていた。以前観たことはあったが、記憶もあいまいになり、もう一度観たくなったのだ。そして、驚いた。映画を観ていたら、不意に「イカダごっこ」のシーンになったからだ。
それはほんの1分に満たない、あるかなしかのシーンで、この映画だったということすら、すっかり忘れ去っていた。だが、わたしと娘の「イカダごっこ」が、この映画から来ているということは、はっきりと判った。「イカダごっこ」だけが映画から独り歩きをし、わたし達のなかに残っていたのだ。

「ねぇ、イカダごっこ、覚えてる?」
そう訪ねるわたしに、中学生になった彼女は笑ってうなずいたものだった。
いつか彼女は『死ぬまでにしたい10のこと』を観るだろうか。今もまだ、イカダごっこを覚えているだろうか。

真っ赤なアンティーク・ラジオの表紙が、素敵です。
左側は、カバーの箱。中央公論新社刊。

アビー・リンカーン作詞『Blue Monk (Monkery's The Blues)』
訳は『ブルー・モンク(修業はつらい)』

ランディ・ニューマン作詞作曲『Mr. Sheep』
訳は『羊くん(ミスター・シープ)』

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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