はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『ダークルーム』

近藤史恵の短編集『ダークルーム』(角川文庫)を、読んだ。
8編のミステリーは、裏表紙で、こう紹介されている。
「立ちはだかる現実に絶望し、窮地に立たされた人間たちが取った異常な行動とは。日常に潜む狂気と、明かされる驚愕の真相」
高級フレンチレストランで、毎晩ひとり食事する美女。自殺した元恋人が、新しい恋人に乗り移ったと疑う男。双子の美少女モデル達と、殺されたマネージャー。何も知らないふりをしつつ、兄の恋人に激しい嫉妬を抱く妹。
ひとつひとつのストーリーが、静かな寒気を呼ぶ恐ろしさを持っていた。
なかでも、いちばん好きだったのはラストに収められた書き下ろし『北緯六十度の恋』だ。多佳子は恋人の園子とフィンランドを訪れた。3年前から同性愛者の園子の恋人として振舞ってきた多佳子には、園子への復讐の計画があった。以下本文から。

草というのを聞いたことがあるだろうか。
わたしは子供の頃、弟の部屋でこっそり読んだ忍者漫画で知った。
草の任務についた忍者は、その標的の土地に普通の人として移り住む。そして三年、五年、ときによっては何十年も忍者としての自分を隠して、そこで生活を営むのだ。そして、すっかりそこに溶け込んだ頃に、任務遂行の知らせがやってくる。それが暗殺や、重要な情報を雇い主に流すことだったとしても、すっかりその土地やコミュニティに溶け込んでしまった草は疑われない。簡単に敵の懐に忍び込み、任務を遂行することができるのだ。

多佳子は、共に3年の月日を過ごし、手酷い裏切りで園子の傷が深くなることを確信し、計画を実行しようとしていた。だが、その先に待っていたものは。

もし何年も信頼し合ってきたと思える人が「草」と同じことをしようとしていたら? そう考えると空恐ろしくなるが、また逆に、人は、人を信頼することで生きているのだと、本を閉じ、強く思ったのだった。

カフェラテを飲みながら、読書タイム。夏に合う涼しくなる小説です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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