はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『天使はモップを持って』

引き続き、近藤史恵を読んでいる。『天使はモップを持って』(文春文庫)
オフィスを舞台にしたミステリー要素たっぷりの連作短編集だ。
変わっているのは、探偵役をするビルの掃除を仕事にする人物が、モップなど似合わないようなファッショナブルな格好をした十代の女の子だということだ。彼女はキリコ。主人公はそのビルの会社に入社したばかりの大介だ。

そんなキリコと大介が、社内で起こった謎を解いていく。キリコが掃除する場所には、意識せずとも謎解きのヒントが隠されている。ゴミを捨てる人も、汚す人も、そこを掃除する人間がどう思うかなど考えることはない。翌朝、オフィスが綺麗になっていてもそれは当然のことであり、掃除をする人が入ったのだと想像力を働かせる人は少ない。キリコが掃除する場所には常に人の心の隙や油断が落ちていて、そこから人の本性が見え隠れもする場所なのである。

謎が解けたことで、そんな人の心根を垣間見てしまい、人間関係の修復に悩む大介に、キリコは言う。以下本文から。

「大丈夫、世の中はお掃除と一緒だよ。汚れたらきれいにすればいい。また、汚れちゃうかもしれないけど、また、きれいにすればいい」
「でも、絶対、落ちない汚れだってあるだろう」
「そりゃあ、ね。でも大部分は、根気とテクニックさえあれば、なんとかなっちゃうもんよ。コツとしては早いほど落ちやすいってこともあるけどね」

掃除の仕事に誇りを持って、毎日を過ごしているキリコは、本当に眩しい。

カラフルな表紙のキリコ、とっても可愛いです。
続編『モップの精は深夜に現れる』も、おもしろかった!

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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