はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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100通りの味噌汁

雨が窓を叩く音で目覚めた。ふと、朝なのか夜なのかわからなくなる。
しかしすぐに「卒業式の後、帰ってきて眠っちゃったんだ」と気づく。
娘の高校の卒業式。式の間は晴れ間も見えたが、午後から降り出したようだ。
「よかった」ベッドの上で、ようやく大きく安堵のため息をついた。彼女の3年間の高校生活が楽しい毎日であったことに。

卒業式でいつも思うことは、どの親にだって、自分の子が特別なのだということだ。代表で卒業証書を受け取ることはなくとも、特別に何かで表彰されることはなくとも、わたしと夫には彼女が何しろ一番であり、自慢の娘である。多分どのお父さんもお母さんも、そう思って座っているのだろう。
卒業生ひとりひとりに、家庭があるんだよなと、考える。
それぞれに、家族の会話があり、温かい食事があり、笑ったり喧嘩したりする場所がある。100の家族があれば、100通りの味噌汁の味があり、それはどこのが美味いとかいう意味を超え、違って然るべきものだ。
家庭って、不思議だな。ごく普通の家庭だと思える我が家だって、多分他の家から見たら、いろいろ違っているんだろう。実際、ごく普通の家庭なんて存在しないのかも。

ふらふらとベッドから起き上がると、夫が呆れた声を出した。
「よく寝たねー」
時計を見ると、もう夕方。ベッドに入ってから3時間経っていた。

娘が通った高校の正門を入ると、像が立っている。
プラトン、ソクラテス、アリストテレス。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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