はりねずみが眠るとき
昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
林檎のように剥く日向夏
ご近所さんに、日向夏をいただいた。
宮崎産で、檸檬とグレープフルーツを合わせたよう、とも言われる瑞々しさが売りの蜜柑。「ひゅうがなつ」と読むそうだ。
「林檎を剥くみたいに、剥いてくださいね」とのこと。
蜜柑なのに、包丁でくるくると皮を剥くのだそうだ。
剥いていて、小説のワンシーンを思い出した。川上弘美の『センセイの鞄』。何度も読み返した大好きな恋愛小説だ。以下、本文から。
林檎を、かつての恋人に剥いたことがあった。もともと料理は得意ではないし、たとえ得意だったとしても、恋人に弁当を作ってあげたり部屋まで行ってこまめに料理を作ったり手料理の夕に招いたりするのは、趣味にあわなかった。そういうことをすると、ぬきさしならぬようになってしまうのではないかと、恐れた。ぬきさしならぬように運ばれていると相手が思うのも、いやだった。ぬきさしならなくなってもかまわないようなものだったが、かまわないとかんたんに思うことができなかった。
林檎を剥いたとき、恋人は驚いた。あなたも、林檎の皮なんか剥くんだね。そんなふうに言った。皮くらい剥くわよ。そりゃそうだね。そりゃそうよ。そんな会話を交わしてしばらくしてから、恋人とは疎遠になった。どちらからか言いだしたのではない。なんとなく電話をかけあわなくなった。嫌ったのでもない。会わなければ会わないなりに、日は過ぎていった。
日向夏をくるくると剥きつつ、考えた。
林檎の皮を剥く指先にだけではなく、毎日のなかにあるほんの些細なことの一つ一つに、人の心の小さな揺れは、見え隠れしているんだよなぁ、と。
檸檬よりも、もう少し優しい黄色をしています。
剥き方などがかかれた取扱説明書(?)を真似て、
むいた皮を飾って、そのなかに入れてみました。
宮崎産で、檸檬とグレープフルーツを合わせたよう、とも言われる瑞々しさが売りの蜜柑。「ひゅうがなつ」と読むそうだ。
「林檎を剥くみたいに、剥いてくださいね」とのこと。
蜜柑なのに、包丁でくるくると皮を剥くのだそうだ。
剥いていて、小説のワンシーンを思い出した。川上弘美の『センセイの鞄』。何度も読み返した大好きな恋愛小説だ。以下、本文から。
林檎を、かつての恋人に剥いたことがあった。もともと料理は得意ではないし、たとえ得意だったとしても、恋人に弁当を作ってあげたり部屋まで行ってこまめに料理を作ったり手料理の夕に招いたりするのは、趣味にあわなかった。そういうことをすると、ぬきさしならぬようになってしまうのではないかと、恐れた。ぬきさしならぬように運ばれていると相手が思うのも、いやだった。ぬきさしならなくなってもかまわないようなものだったが、かまわないとかんたんに思うことができなかった。
林檎を剥いたとき、恋人は驚いた。あなたも、林檎の皮なんか剥くんだね。そんなふうに言った。皮くらい剥くわよ。そりゃそうだね。そりゃそうよ。そんな会話を交わしてしばらくしてから、恋人とは疎遠になった。どちらからか言いだしたのではない。なんとなく電話をかけあわなくなった。嫌ったのでもない。会わなければ会わないなりに、日は過ぎていった。
日向夏をくるくると剥きつつ、考えた。
林檎の皮を剥く指先にだけではなく、毎日のなかにあるほんの些細なことの一つ一つに、人の心の小さな揺れは、見え隠れしているんだよなぁ、と。
檸檬よりも、もう少し優しい黄色をしています。
剥き方などがかかれた取扱説明書(?)を真似て、
むいた皮を飾って、そのなかに入れてみました。
HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
ご意見などのメールはこちらに midukisae☆gmail.com
(☆を@に変えてください)
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