はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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季節の香りの宅配便

風邪だろうか。洗濯物だけ干して、朝から眠っていたら、友人からの電話に起こされた。
「柚子がたくさん生ったんだけど、いる?」
「あ、欲しい。うん。柚子大好き」
東京で農業を営むご主人と暮らす彼女は、結婚前からの友人。保育士になるための勉強をしながら勤めていた会社の同僚だった。1年か2年に一度、ゆっくりと会っておしゃべりしたりもするが、暮れの忙しい時期に、こうして思い出してくれたことが嬉しかった。
 
届いた箱を開けると、柚子の香りが広がった。クチナシの実が柚子を飾るようにいくつか入っている。彼女のセンスの良さに感じ入りつつ、柚子を一つ手に取り匂いを嗅いでみる。うん。柚子だ。いい香り。
さっそく、いただきものの大根で、柚子大根を作った。柚子は刻むと強く香り、その酸味を思い切り含んだ香りに、また微笑む。
柚子大根を口に入れ、考えた。人と人って不思議だな。彼女がわたしを思い出してくれた時、わたしも彼女を思い出していたのだ。それは年賀状をかくという年中行事の中でのことだったが、確かに彼女を思い出し一筆したためた。
子ども達が幼かった頃一緒にキャンプしたことや、彼女の息子が働くビールバーでふたり何種類ものビールを飲んだことや、遊びに行った彼女の家の雰囲気や広い庭に咲く花を思い出し、賀状をかいたのだ。
来年はたぶん、会ってゆっくりしゃべれるだろう。柚子の黄色にふと思い、気づいた。風邪はもう、何処かに去っていた。

太陽をいっぱいに浴びたと言わんばかりの柚子と一緒に、
手紙が入っていました。「寒い冬を元気にのりきって、春に会おうね!」

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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