はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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糸コン存在の証

娘とふたりの夕飯は肉じゃが率が高い。
「鶏肉、じゃがいも、玉ねぎ、白滝。好きなものばっかり」
と、娘は喜ぶし、栄養のバランスも良く、寒い季節には温まる。うちの肉じゃがは大抵、鶏肉で作る。よりヘルシーだし、チキン大好き家族なので、評判もいい。しかし娘が一番好きなのは、何と言っても白滝だ。
「白滝って、綺麗なネーミングだよね」
と、娘は熱い白滝を口に運びつつ、さらに言った。
「春雨も綺麗だよね。でもそれに比べると糸蒟蒻って」
「確かにそのまんまだね」
神戸出身の夫は、すき焼きには糸蒟蒻だとずっと主張してきた。でもわたしにはその違いがわからなかった。蒟蒻売り場で見ても、太さの違いなどはあれど大抵白滝と表記してある。でも、ま、いっか、どっちでもとO型的てきとーさですき焼きの買い物をしてきた。そして、夫に言われるのだ。これは違うと。
「神戸では、すき焼きには糸コンなんだよ」
だがある時、突然謎は解けた。
夫の実家、神戸の家のキッチンで義母と夕食の支度をしている時。
「糸コンも入れましょうか」と義母が冷蔵庫から出したのはきっぱり「白滝」とかかれたものだったのだ。
「関西では、白滝のことを糸コンって呼ぶんだ」
ようやくすとんと腑に落ちた。
しかし調べてみると、昔は製法が違ったそうだ。蒟蒻になる前に突くのが関東で作られていた「白滝」で、蒟蒻になってから突くのが関西で作られていた「糸蒟蒻」しかし今、製法はどちらも白滝化して、違いが無くなった。呼び名だけが関東と関西で分かれているという。
「現在でははっきりと区別できる要素はないらしいよ」とわたし。
「ウィキ情報?」と娘。
「by日本こんにゃく協会。ウィキじゃないけどネット検索」
夫が神戸の家で食べたすき焼きの糸コンは、今では存在しないものだった。関西圏に、白滝を糸コンと呼ぶことで存在した証を残しつつも。

肉じゃがも美味しいけど、たまにはすき焼き、食べたいな。
神戸のすき焼きは、もちろん割り下は使いません。
肉を焼いてから、砂糖や醤油を直接肉にかけ、野菜を乗せます。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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