はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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花火に思う親子逆転の瞬間

親子が逆転したと感じる瞬間を、何度となく経験した。
25歳の息子と23歳、18歳の娘の3人の子ども達を持つ母親ならば、当然のことではある。
なかでも印象的だったのは、息子が高校に入った頃のこと。本の虫である彼がホラー作家と言われる乙一(おついち)の『ZOO』(集英社)を買って来た。熱中して読んでいたので、さぞや面白いのだろうと声をかけた。
「それ、面白そうだね。お母さんにも貸してくれる?」
すると彼は、戸惑いの表情を見せ、遠慮がちに言った。
「うーん。お母さんには、ちょっと」「ちょっと何?」
「いやー、刺激が強すぎるかなって。残酷な場面が多いから」
まさに親子逆転の瞬間である。あたかも親が読む残虐なホラーを子どもに薦めるのはどうかと考え込むかのような表情に、驚かされたものだった。そして、彼の思いやりに満ちた忠告に従い『ZOO』は読まないことにした。

この話には続きがある。息子と7歳離れた末娘がやはり高校に入った頃、乙一を読み始めた。わたしは、同い年だった頃の息子より余程大人びた彼女に、息子とのその時の会話を話して聞かせた。すると彼女は、
「乙一のなかでも、綺麗な話もあるよ」と言い1冊の本を差し出した。
『夏と花火と私の死体』(集英社文庫)乙一デビュー作だ。
「確かに、綺麗なタイトルだね」
わたしは彼女のおかげで、7年経ち、ようやく乙一の世界に足を踏み入れることができた。『夏と花火と私の死体』は、主人公である9歳の私が、冒頭であっけなく殺される。その死体となった私が、その後周囲で起きた出来事を、まるで見ているかのように一人称で綴っていくという、設定からして斬新な小説だ。また推理小説の趣きもあり、悲しい夏が花火の美しさと共に情緒たっぷりに描かれていて、楽しんで読むことができた。

ふたりとも、高校生になった頃には、本を薦めるも薦めないも、相手を見て、相手を思いやり、考えることができるようになっていたのだ。
乙一は、子ども達から母親であるわたしに、そんなプレゼントをくれるきっかけを作ってくれた作家である。
  
先週遊びに来たクリス&マリーと娘とで、花火アートに挑戦していました。
カナダには打ち上げ花火しかないのだとか。ずいぶんと楽しんでいました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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