はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『嵐のピクニック』

本谷有希子の短編集『嵐のピクニック』(講談社文庫)を読んだ。
本屋での衝動買いは珍しいことではないが、帯の文句に魅かれることは、わたし的にはとても珍しい。
「奇妙な味」の短編が発想と形式の見本帳というほどにも、繰り返される。
               ― 大江健三郎 と、帯にはかかれていた。
薄い文庫であり、13の短編とも掌編とも言える小説を収めているところにも魅かれた。裏表紙の紹介文に、「狂気」「妄想」「ブラック」「奇想天外」などの言葉が並んでいるのにも、わくわくした。
そしてわたしは、読み始めてすぐ、そこに言葉を追加した。「呆然」

2話目『私は名前で呼んでいる』は、会議中、カーテンの膨らみが気になってどうしようもなくなる女性部長を描いた掌編。以下本文から。

なんでそんなにも思わせぶりに膨らんでいるの? さっきは弱気になったけど、私はあなたたちのことを「気のせい」なんて認めない。そうやって、さも何かいる雰囲気で膨らんで、私だけじゃない、今まで世界中の人たちをどれだけ動揺させてきたのよ。誰かいるの? いないの? はっきりしなさいよ。

やがて彼女は会議室を飛び出し、走りだした。そして、見上げたビルの窓に、自分を見下ろす誰かを見つけたのだった。

大江健三郎賞を受賞したときの選評がラストに収められているのだが、そこで大江はかいている。「フクシマ3.11以来」と前置き「まったくの久しぶりで、希望の気配のある小説を読んだ思いがしました」
これを読み、えっ、そうなの? と思ったが、この短編集を読み終えると、確かに気持ちが明るくなっていた。ヒトって、実はどうでもいいことを真剣に思い悩み生きているのかも知れないと、すとんと腑に落ち肩の力が抜けたのだ。

本谷有希子(もとやゆきこ)1979年生まれ。
2000年「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。本書で、第7回大江健三郎賞を、『自分を好きになる方法』(講談社)で、第27回三島由紀夫賞を受賞。

短編タイトルの、この絶妙微妙な傾き加減にも奇妙さが表れています。

ここまでくると、はっきりと奇妙です。まっすぐにはなれない悲しさ?
それは、喜びでもあるのかな。または、まっすぐにはならないという決心か。

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水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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