はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『小野寺の弟・小野寺の姉』

家族は、チームだと、以前『月の砂漠をさばさばと』を読み、感じた。
それは母親と小学生の娘との二人暮らしのチームだったが、今回読んだ、西田征史『小野寺の弟・小野寺の姉』(泰文堂)は、タイトルからも判るように、チームを組んでいるのが姉と弟だ。
40歳を過ぎた姉と30代半ばの弟。共に未婚、恋人なし。特別仲がいいという訳ではないが、ふたりのリズムで暮らしている。姉は、はっきりものを言い、じっとしていることが苦手。風水にハマり、未体験である朝寝坊をするのが夢。弟は、思ったことの半分も言葉にせず、時間通りに動くのが苦手。ご飯が炊ける匂いを何より愛し、なんだかんだ言っても姉には逆らえない。

家族って、面白いなぁと思ったのは、視点が弟、姉と交互になっていることで、同じ出来事に対するふたりの感じ方の違いや、たがいに内緒にし合っていることなどが、明らかになるところだ。

たとえば、姉、より子の章。
進は昔から迷子になりやすかった。そうなるたび、私はこうやって片手を上げ売り場の真ん中に立ってあげる。大柄な私がこうすると目立つのか、幼き日の進は、すぐにこちらを見つけて駆け寄って来た。おそらく自由の女神のように見えていたのだろう。

そして、弟、進の章。
大柄な姉ちゃんが手をあげる姿はとても目立つ。『自由の女神』みたいなポーズだが、まるでそうは見えない。おかっぱ頭で右手を突き上げているその姿は『選手宣誓をしているこけし』みたいだといつも思う。

こんな風に、ちょっとズレながらチームを組む姉弟。親子でも、兄弟でも、夫婦でも、家族はやっぱりチームなんだと、そして、ちょっとズレているのが当たり前なんだと、読み終えて温かい気持ちになった。

本屋でタイトルに魅かれて、衝動買いしました。
小野寺が中心にいて、その弟とその姉とも取れるタイトルですが、
それがふたりのことを指すというのが、面白くて。
秋には、映画公開予定だそうです。姉は片桐はいり、弟は向井理。

カバーをとると、なかには小説のキーワードになる絵が描かれていました。
特別なことをどちらかやるか、決める時にするオセロゲーム。
より子がハマっている風水によって、居間に置かれた赤べこ。
花が咲くと夢が叶うといわれる、ワイルドストロベリーの鉢。
スーパーの福引きで当てまくった、ポケットティッシュ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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