はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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家族ってチームなんだね

出会ったことに幸せを感じる本が、いく冊かある。
北村薫の『月の砂漠をさばさばと』(新潮社)は、なかでも代表する一冊だ。
お母さんと、小学3年生のさきちゃん。ふたりの家族のお話。「お話」とかいたのは「物語」と表現するにはあまりに自然で、日々のなかに埋もれてしまいそうな小さな瞬間を切り取って、そっと本の上に乗せたような柔らかさが、そこ此処に感じられるからだ。

小学校の福島校長先生のファーストネームが思い出せなくて、ふたりで考えるシーンがある。「校長先生だから、豪華な名前じゃない?」と、さきちゃん。
考えに考えて「……福島……デラックスだ!」と、お母さん。
「じゃ、第一小の校長先生は、ゴージャスかな」と、さきちゃん。
さてでは、第三小の校長先生は?

また、さばの味噌煮を台所で煮るお母さんが、ひとり歌う。
♪ 月のー砂漠を さーばさばと さーばの味噌煮が ゆーきました ♪
さきちゃんは、月に照らされた砂漠をゆくさばの味噌煮を想像し「かわいい」と言った。そんなさきちゃんに、お母さんは思うのだ。「さきが大きくなって、台所で、さばの味噌煮を作る時、今日のことを思い出すかな」と。

3年生のさきちゃんだが、小さな頃の話をする場面もある。台風の時のことだ。窓を開けて、お母さんに叱られたことを覚えていると言う。
「あんまり風が強いから、心配になったの。それでね、ここで、うちの中に風を入れておけば少しは違うかなって思ったの。食い止められるかなって」
さきちゃんの話を聞いて、お母さんは考えた。
(子どものやることにも、理屈があるのね。でもあなたの理屈が見えないことは、これからだって、きっとある。そちらから、こちらが見えないことも)

くすくす笑ったり、ジーンとしたり、好きなシーンがたくさんあって、とてもじゃないがかききれない。最後に作者は「ふたりは生活のチームだ」とかいている。家族ってチームなんだと、繰り返し読むたびに思い出し胸が温かくなる。わたしの胸の片すみに温かく消えない灯りをくれた、とても大切な本だ。

読み返したら、空豆を食べたくなりました。
12のお話が、それぞれ季節感にあふれています。
おーなり由子のカラーの絵がところどころに入ってるのも素敵です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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